UL規格とは?取得する必要性や認証方法について解説

2023年7月11日
UL規格とは?取得する必要性や認証方法について解説

製品を北米に輸出する際によく耳にする規格に「UL規格」があります。しかし、その必要性や認証方法まで詳しく知る方は、そう多くはないのではないでしょうか。

この記事では、UL規格とはどのような規格なのか、どのように取得すればいいかなどの基本的な内容や、北米ではほぼ取得必須である理由などについて解説します。

UL規格とは

UL規格は、アメリカの認証機関であるUL LLCが定めている規格です。UL LLCは民間の営利企業で、世界各国に支社を持っています。

UL規格にはさまざまな種類があります。代表的なカテゴリとして挙げられるのが、電気・電子製品に関する規格です。このカテゴリのなかには、電気機器の内蔵方法や、懐中電灯、床表面素材の滑り防止、冷暖房設備、リチウム電池など、広範囲に渡る機器が含まれています。なお、電気・電子製品以外に、人命保護製品の規格、建築製品の規格、産業用制御設備の規格、プラスチック素材の規格などもあります。

UL規格はアメリカのみではなくカナダ国内でも広く使用されており、北米への輸出に関してUL認証の重要度は非常に高いものとなっています。

UL規格の目的について

ULは1894年に設立されました。「科学的調査、研究、試験、検査により種々の製品・部品・材料・システムの使用が生命と財産に与える危険性を調査し認証をおこない、これらの情報を公表すること」がその目的として定められており、さまざまな製品の機能や安全性の標準化をおこなうことで、製品による事故を低減させることに貢献しています。

具体的には、安全工学に基づき、安全で安心、持続可能な生活および労働環境を促進し、安全および環境に配慮した製品の生産を支援することにより、生命や財産を脅かすリスクを低減します。また、研究および調査を通じてより安全な社会を創ることにより、UL社が発行する認証マークへの信頼性を高めることを使命としています。

UL規格の認証マークの種類

UL規格に適合していると判断されると、UL規格の認証マークの使用が認められます。この認証マークには、リスティングマークとレコグナイズド・コンポーネント・マークの2種類があります。

リスティングマーク

リスティングマークは、完成した製品がUL規格に適合しており、認証が得られた場合に使用されます。この際、UL社が発行している認証済み品のリスト、いわゆるグリーンブックに加えられるため「リスティング」マークと呼ばれています。

リスティング認証を受けると、UL社が想定する全条件下で正常な動作をおこなう製品であると認められ、安全基準を満たす証明となります。

レコグナイズド・コンポーネント・マーク

レコグナイズド・コンポーネント・マークは、完成品ではなく、製品の中にあるコンポーネント、つまり部品や材料を組み合わせて作られた構成に対して使用されます。レコグナイズド・コンポーネント・マークを受けたコンポーネントは、リスティング認証を受けた製品に組み込むための安全基準を満たしていることを意味しています。

レコグナイズド・コンポーネント・マークは完成品に使用されるわけではないため、不完全な認証であるともいえます。例えば、ある2つのコンポーネントがあり、それぞれUL規格に適合しレコグナイズド・コンポーネント・マークが得られていても、その2つのコンポーネントを使用して作られた最終製品が無条件でリスティングマークを得られるわけではありません。なぜなら、2つのコンポーネントを組み合わせた際に新たに発生する事故のリスクについては安全性が確認されていないからです。リスティングマークを得るためには、新たにUL規格の試験及び検査を受ける必要があります。

しかし、レコグナイズド・コンポーネント・マークのあるコンポーネント同士を用いたほうが、マークのないコンポーネントを使用した際に比べて認証試験が簡略化され、費用や時間が節約されます。

このレコグナイズド・コンポーネント・マークが得られたコンポーネントは、UL社のイエローブックに記載されます。

UL規格の必要性

UL規格の必要性

UL規格は、製品が一定の安全基準を満たしており高い安全性を持っていることの証明となるものです。認証を得られれば北米でのビジネス拡大を後押ししてくれるものとなります。では、具体的にどのような企業がUL認証を取得すべきなのでしょうか。

UL規格が推奨される企業

UL規格が推奨されるのは、主に産業機械や電気製品などのメーカーです。UL規格を取得しないとアメリカ国内で販売ができない、または、アメリカ国内に搬入できても工場に設置するためにUL規格が必要となる場合があるため、取得したほうが良いでしょう。

日本国内におけるケーブルなどのパーツメーカーも、UL規格の認証を得ておくべきでしょう。ケーブルやパーツが機械製造に使用されるケースがあるからです。完成品がアメリカに輸出される場合、細かいパーツまでUL規格の認証を得ていたほうが、認証取得に有利に働きます。

UL規格の認証方法

UL規格を取得するためには、内部に使用する部品であれば対応している規格を確認し、これから認証させるものであればどの規格に対応させるべきかなど、製品がどの規格に対応しているかを確認する必要があります。

対応規格の確認の次は認証申請です。申請をおこなう際には、まずは見積・申請依頼書を作成する必要があります。また、仕様書や取扱説明書といった基本的な書類から、回路図やブロック図、部品リストなど、その製品が何からどのようにして作られているかを説明するための資料、さらには外観図や写真なども必要となります。これらの書類や資料を準備し、UL社に送付します。

UL社からは、見積書や契約書、試験に必要なサンプルリストなどが送られてくるので、必要事項を記入したうえでサンプルとともにUL社に返送します。その後、UL社により製品の試験及び検査がおこなわれ、ULの規格を満たしていると判断されれば合格となります。完了通知書が発行されます。制御盤の場合は、盤内に使用される部品の認証の多くは破壊試験がともないます。

さらに、製造工場がULの認証マークの検査を受けておらず、新規に登録される場合、もしくは評価担当のエンジニアが特別に必要だと判断した場合には、初回ロット検査(IPI)、もしくはプレプロダクション訪問(PPV)がおこなわれます。

三笠精機のUL規格に関する事例

三笠精機は、UL社から制御盤製造工場のUL認証を受けています。UL認証工場は、UL508Aに適合した制御盤を製作した際にUL規格適合製品のラベルを貼り付けて出荷できます。

参照:三笠精機はUL認証工場になりました!

UL認証工場として三笠精機がこれまでに対応してきたUL認証事例をご紹介します。

事例1 アメリカ向けの機械のNFPA79、UL508Aに適合した設計と盤製作

あるメーカー様から、NFPA79とUL508Aの認証を受ける前提でアメリカ向けの機械の設計と制御盤の製作をご依頼いただきました。通常2ヵ月以上かかる内容でしたが、1ヵ月、長くても1.5ヵ月の短期間で納品して欲しいとのご要望でした。

装置が複雑である場合、また特殊な仕様の場合は長期間の工程が必要となりますが、幸運にも規格要求事項が標準的であり、要求指令に認証が必要との指令もなく、さらに国内のパーツで対応できることがわかりました。そこからチーム一丸となって設計・製造に取り組み、1.5ヵ月の短納期で無事に納品させて頂きました。

参照:NFPA79、UL508A適合の北米向け制御盤の設計・製作

事例2 UL認証のコンサルティングからブレーカーボックスの製造

充電ステーションをアメリカへ輸出する際に想定外の事態が発生したと、ある充電ステーションメーカー様から相談を受けました。普通ならUL認証対象外として扱われるブレーカーボックスのUL認証を取得しなければならないとのことでした。

当社にはブレーカーボックスの実績はほとんどありませんでしたが、この課題を解決するために、あるアイデアをご提供しました。ブレーカーボックスとその隣にあるアース用端子台を組み合わせ、制御盤として主張するというものです。このアイデアに基づいて設計、製造をおこない、完成品を実際に審査に出してみたところ無事合格。UL508Aの認証を得ることができました。

参照:UL認証のコンサルティングからブレーカーボックスの製造

まとめ

UL規格とは、UL社がさまざまな分野の製品に対して定める規格です。北米向けに輸出をおこなう企業にとっては、UL認証が取得できなければプロジェクトが停止してしまう恐れがあります。

アメリカでビジネスをおこなう際にはほぼ必須といえるUL規格の認証についてお困りの際は、ぜひ三笠精機にご相談ください。さまざまな実績とアイデアをもとに、最適かつスムーズな対応でUL認証の取得を実現いたします。