NFPA79とは?認証取得に必要な審査項目や他のUL規格との違いについて解説
アメリカの産業機械の電気規格であるNFPA79。この規格はアメリカおよびカナダで大きな影響力を持っており、北米に産業用機械を輸出するメーカーにとっては重要な存在となっています。
今回は、アメリカの産業機械用電気規格であるNFPA79を解説します。
目次
NFPA79とは
NFPA79とは、全米防火協会(NFPA)が定める産業機械用電気規格のことです。自動車業界や半導体産業、食品産業など、産業機械を使用する幅広い業界で採用されており、アメリカの産業界においては電気に関する重要な規格と位置付けられています。
NFPA79は電気システムの安全性を向上させるために作られており、産業機械のオペレーターや機器・設備を感電や火災といった電気事故から保護するために必要な、電気に関する規格を定めています。NFPA 79の「79」とは全米防火協会が作っているさまざまな規格の一つであることを示しており、他にも用途により数多くの規格が存在しています。
電気の規格といってもその範囲は広く、電気機器の保護、使用する電圧やケーブルの種類、配線の接続方法、接地方法、制御方法などのカテゴリがあり、そのカテゴリ内のさまざまな要件に対して詳細な規格が定められています。この規格を守ることにより電気事故のリスクを最小限に抑えるとともに、産業機械の安全性および信頼性を向上させ、事故の低減による生産性の向上を目的としています。
全米防火協会は民間の非営利団体であり、その規格には法的な強制力はありません。しかし、安全基準として州法等で引用されている場合があるため、事故が起き、事故の個所が規格と異なっていた場合には、事故を起こした企業から損害賠償を請求される恐れもあります。そのため、アメリカ向けに産業機械を製造、輸出する際には、NFPA79を遵守することが大切です。
NFPA79は3年ごとに改定されており、その都度内容が変更される場合があるため、過去に合格していても新たに認証を取得する際には最新の内容を確認する必要があります。
NFPA79と他のUL規格との違い
アメリカにおける認証機関では、UL(Underwriters Laboratories)が広く知られています。NFPA(National Fire Protection Association)は前述のとおり非営利団体であり、営利企業であるULとは違いがありますが、どちらも独自の規格を定め、工業製品が規格に沿って作られているかどうかの試験や検査、認証をおこなっています。
アメリカで広く用いられている電気の安全性に関する規格がNFPA79とUL508Aですので、アメリカに産業機械を輸出する場合はNFPAおよびULに沿った規格で設計・製造し、認証を得るのが一般的です。UL508Aは産業機械の電気システムのうち制御盤に関しての規格を定めているため、一般的には装置全体ではNFPA79、制御盤ではUL508Aを取得します。これらの規格は、アメリカ規格協会(American National Standards Institute)の頭文字であるANSIとともに、ANSI/NFPA79、ANSI/UL508Aと表記される場合もあります。
ULの場合、UL社が定めた方法に従って完成品の試験および検査をおこない、合格すれば出荷する製品にUL認証マークを貼ることが許可されます。UL社は世界的な企業であり、日本にも支社があるため、試験および検査は日本国内でもおこなえるという利点があります。
NFPA79の規定範囲
NFPA79は産業機械の電気安全規格を定めており、公称電圧1,000V以下の電圧で動作する産業機械の電気システム全体に適用されます。公称電圧が1,000V以下であれば、半導体製造装置や産業用ロボット、加工機械など、産業用に使用される機械の多くが含まれることになるため、電気を使って動く産業機械の大部分に適用されることになります。
NFPA79の規程の範囲は、電源、使用環境、輸送および保管、インストールおよび操作条件、機械の取り外し方法、保護方法、過電流保護方法、モーターの過負荷防止、異常加熱防止、接地、制御回路、インターロック、インターフェイス、制御装置、制御装置の設置および場所、ケーブル等の使用条件、モーター、安全標識、技術文書、自動制御と、多岐にわたっています。これらの項目の設計が適切になされているか、適切にインストールされているかを詳細に確認・審査され、規格を満たしていなければ審査に不合格となります。大規模な装置になればなるほど、設計段階で入念な検討が必要になります。
NFPA79の認証取得に必要な審査項目
NFPA79の審査は、産業機械がNFPA79の規格に沿った設計がなされているか、適切にインストールされているかといった評価をとおしておこなわれます。NFPA79の実際の審査項目は以下6項目です。
- 電気設備が技術文書に書かれているとおりであるかの確認
- 絶縁抵抗テスト
- 電圧テスト
- 残留電圧テストに対する保護
- 機能性テスト
- リスクアセスメントの確認
最初の審査は、電気設備が設計どおりであるか技術文書を参照しながら確認され、パスすれば次の審査となる絶縁抵抗テストがおこなわれます。絶縁抵抗テストは電源回路と接地間に500Vが印加され、絶縁抵抗が1MΩ以上であれば合格となります。
次の電圧テストでは、0Vから交流で1,500V、直流で2,121Vまで徐々に昇圧され、この電圧範囲で壊れないかどうかが確認されます。次に残留電圧が5秒以内に60Vを下回っているかどうかが確認されます。
最後に電気設備の機能テストがおこなわれ、結果は文書として残されます。
三笠精機でNFPA79に対応した事例
三笠精機では、これまで多くの企業様のNFPA79認証をサポートして参りました。その事例を2つご紹介します。
事例1 プレス機メーカー様
自社のプレス機をアメリカに輸出するにあたり、ULやNFPA規格対応の制御盤の製造が必要となったものの、自社では対応が難しいとのことで、当社に設計・製造をご依頼いただきました。そこで、当社にてプレス機用のNFPA79だけでなく制御盤用のUL508Aにも対応した設計・製造をおこない、アメリカの工場に納入しました。
さらに、納入後、弊社から現地へスーパーバイザーを2名送って立ち上げ作業を実施し、期限内に無事に工事を完了しました。対応にご満足いただき、現在も良好なパートナーシップを継続し、メーカー様の海外事業を支えています。
参照:NFPA79、UL508Aに対応した図面変更・サポートから制御盤の製作、現地工事対応まで一貫してサポート
事例2 半導体装置メーカー様
半導体装置メーカー様より、アメリカに装置を輸出するにあたってNFPA79およびUL508Aに対応した制御盤設計のご依頼をいただきました。社内リソースが足りないとのことで、仕様変更前の制御盤のCADデータをいただき当社側で図面を作成。NFPA79およびUL508A認証のための大規模な仕様変更をおこなったうえ、半導体の業界団体の規格であるSEMI規格への対応も加えるという難易度の高い内容でしたが、これまでの知見をもとにスムーズに対応できました。
メーカー様からは、設計の品質はもちろん、当社が対応している間に社内リソースを他の業務に集中できたとご満足いただけました。
参照:大規模仕様変更とSEMI規格対応まで含めた設計のみのピンポイントオーダーにも対応
まとめ
アメリカの産業機械用電気規格であり、公称電圧1,000V以下で作動する機械が対象となるNFPA79。その認証を受けるためには、装置の設計段階から詳細な検討をおこない、6項目の審査をパスする必要があります。
NFPA79の認証取得に向けた制御盤の設計・製造は、幅広い知見と豊富な実績を持つ三笠精機にぜひご相談ください。
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