UL508Aとは?認証取得に必要な審査項目や他のUL規格との違いについて解説
世界にはさまざまな規格が存在していますが、アメリカにおいて制御盤の規格といえばUL508Aが有名です。制御盤は電気設備を動かすためには必要不可欠な装置であり、このUL508Aの認証取得は機械を輸出する際に重要なものです。
今回は、このUL508Aについて解説します。
UL508Aとは
UL508Aとは、アメリカのUL LLC(Underwriters Laboratories Limited Liability Company)が定める、産業用機械の制御盤に関する規格です。Standard for industrial control panelsとも呼ばれます。
UL LLCはさまざまな試験および検査、認証をおこなう民間の営利企業です。1894年創業と、100年以上の古い歴史を持っています。アメリカではさまざまな分野において古くからこのUL社の規格が使用されており、ULの認証を得られるかどうかは、その製品の安全性を示すうえで重要な基準となっています。
ULの次の数字はカテゴリを表しており、508は工業用制御機器のカテゴリを表しています。さらに、最後にAを付けることで産業用制御盤のカテゴリを表しています。
UL規格は非常に細かい規定が定められていることでも有名であり、規格を満たすためには設計の段階から入念な検討をおこなわなければいけません。審査に合格すると、UL認証マークを表示することが許可されます。このUL認証を得ていないと販売に支障をきたす可能性があり、北米へ輸出をおこなううえで取得すべき重要な認証です。
UL508Aと他のUL規格との違い
制御盤は、トランス、マグネットコンタクタ、ケーブル、スイッチ、シーケンサー(PLC)、端子、漏電ブレーカーなど、さまざまなパーツから構成されていますが、これらのパーツにも実はUL規格が存在しています。例えば、シーケンサーなどの制御機器はUL508に分類されており、ブレーカーはUL489に分類されています。
個別の部品単体の認証は部分メーカーがおこない、盤メーカーは認証された部品を使うことが基本となります。これらの審査に合格すると認証が与えられるとともに、ULリストに記載されます。
UL508Aの規定範囲
UL508Aは、用途別の制御盤についてそれぞれの規定が書かれています。その範囲は、すべての制御盤、内蔵制御盤、電力回路、制御回路、定格、表示にわたっています。この他にも、クレーンの制御、エレベーターの制御、火炎の制御、海での使用、噴水制御パネルなど特殊用途の制御および制御盤に関しても規定があります。
そのうち、すべての制御盤に共通した内容としては、工業制御盤はアメリカ国内の電気規格であるANSI/NFPA 70に規定されている装置の取り付けと使用のルールに準拠するように構築されており、その用途に使用可能と判断された材料とパーツを使用することが定められています。
腐食防止に関しても規定があり、鉄や鋼を用いる場合には亜鉛メッキなどで表面を保護する必要があります。しかし、軸受けやヒンジの摺動面など物理的な動作によりメッキがはがれてしまうような場所、鉄や鋼でも電流を流さない小さな部品、ステンレス鋼で作られた部品などには、表面処理は不要となります。
充電部に関しては、絶縁および漏電防止のため、据え付けの際にネジなどの金属パーツの使用を禁止するなど、詳細な規格が書かれています。
間隔に関しても詳細な規格があります。筐体間および筐体内部のパーツについて間隔が定められており、筐体を小さくしようと無理な設計をしてしまうと、この間隔の規格に適合しなくなってしまいます。
制御盤の筐体に電線を接続する際の導管、がい管も寸法などが定められており、絶縁バリアおよび絶縁素材に関しても、条件を満たせば規定の方法や素材を使用する必要が出てきます。
これらの他にも細かい規定がたくさん書かれており、例えばブレーカーには定格電流の80%を超える電流を流してはならないといった規定もあります。制御盤を設計する際には、使用する電流の最高値が定格電流の80%以下になるブレーカーを選択する必要があります。
さらには、接地方法、変圧器と電源の二次接地の方法、接地および接地回路導体および端子の識別などの規定もあります。
上記の内容は制御盤に共通した規格ですので、この規格を満たしたうえで他の用途に記載されている規格を同時に満たす必要があります。
UL508Aの認証取得に必要な審査項目
UL508A認証取得の際には、完成品を一度ULの検査場へ送る必要があります。ただ、UL社は国際的な企業であり、日本国内にも支社があるため、国内で審査を受けられます。
審査では各種試験および検査がおこなわれますが、まずは制御盤の図面等の技術文書を提出し、その内容と実機に差異がないことが確認されます。技術文書に誤りがあった場合や要件を満たしていない機器の使用などの不具合があれば、その点を修正する必要があります。
書類審査に合格すると、実際に制御盤の審査がおこなわれます。審査内容は、電源とアースとの絶縁抵抗を確認する絶縁抵抗試験や、規定の電圧に耐えられるかどうかを確認する電圧試験、実際に機能を満たしているか確認する機能試験などです。
三笠精機でUL508A規格に対応した事例
これまでに三笠精機がUL508A規格に対応した事例をご紹介します。
ある制御盤メーカー様から、製鉄所で使用するUL508A規格に対応した加熱装置の制御盤を新たに作りたいとのお問い合わせがありました。
製鉄所は大規模な設備であり、実際の制御盤の規模も大きくなることが予想されました。要求された短絡電流定格(SCCR)の値は65kAという非常に大きな数値。一般的な制御盤では10kA程度であり、50kAを超えると使用できるパーツが極端に少なくなります。さらに、お客様は漏電ブレーカーの設置をご要望でした。しかし、そもそも65kA定格の漏電ブレーカーが見つかりません。この課題をクリアするために社内で検討を重ねました。
検討のうえで良かったのは、新規に製作する制御盤のため、設計から手掛けられたことです。設計の段階で漏電ブレーカーの上流にヒューズを使用することで短絡電流から制御盤を保護すると同時に、下流に短絡電流が流れないようにできたため、65kAよりも低い漏電ブレーカーが使用できるようになりました。
制御盤に短絡が起こった場合、漏電ブレーカーが動作するまでのごく短時間に短絡電流がブレーカーを通過してしまいます。しかし、ブレーカーの上流にヒューズを取り付けると、ブレーカーに短絡電流が流れる前にヒューズが切れて電流が流れなくなります。このような回路設計をおこなうことで、短絡電流が起こった場合はヒューズが機能し、短絡電流よりも少ない電流で漏電が起こった場合は漏電ブレーカーで遮断できます。
参照:UL508A規格に対応したコンサルティング、CADによる製図、製造、大規模工場での高難易度の設計対応
まとめ
UL508Aはアメリカの産業用機械の制御盤に関する規格です。規格の範囲は、すべての制御盤、内蔵制御盤、電力回路、制御回路、定格、表示と多岐にわたっています。このため、制御盤が複雑になればなるほど、このUL508Aに適合させた制御盤の製作が難しくなります。
こうした米国規格を含む複雑かつ多様な規格に対応した制御盤の製作に関してお困りの際は、ぜひ三笠精機にご相談ください。
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