アメリカ向けNFPA79およびUL508Aへの適合、フィールドエバリュエーションとAHJ

2022年3月16日

アメリカでは、欧州CEマーキングと比較し、装置を輸出・販売・使用するまでに提出の必要な資料が少なく、主に実機を中心とした監査があります。アメリカに装置を販売する際に、装置の使用までに最低限必要なのは、AHJの審査に合格すること、もしくはNRTL(認証機関)による認証またはフィールドエバリュエーションとなります。(CEマーキングでは、使用までではなく販売までに必要となる点が異なります。)

その際に適合性を評価する規格は、一般的な機械類ではANSI/NFPA79(産業機械の電気規格)だと言われており、実際にAHJが評価する場合も主にNFPA79について確認がなされます。またNFPA79は「機械」という単位についての規格ですが、「産業用制御盤」という単位の規格としてUL508Aがあります。こちらはUL(Underwriters Laboratories Inc.)という認証機関が作った規格であるため、認証という方法が可能です。

三笠精機ではUL508Aの認証ラベル付き制御盤を設計・製造することができます。これは、ULよりUL508Aの規格についての十分な知識と技術があることを認められており、単独で制御盤に「UL Listed」ラベルを貼ることができるという意味です。

認証された製品は、AHJを含むその後の審査より優先されることが定められており、審査対象外となります。電気のうちの大半が詰まった制御盤が評価対象外となることで、NFPA79での審査は盤外のケーブルやモーター類の認証確認と機能試験などに限定されますので、審査がスムーズに進み、手直しなどの指摘を受けにくくなります。

『自己宣言について』に記載のとおり、上記アメリカの方法は主に認可であり、要求されないことは対応しなくてもよいという解釈に陥りがちですが、あくまで「AHJが主に確認するのがNFPA79である」というだけにすぎません。アメリカの規格や法令にはISO/IECの各規格に近いものがかなりの確率で存在していますし、仮にない場合でも、製造者責任として安全な製品を作る責任は全てメーカー側にありますので、関連規格などへの適合も基本的に必要であるとご理解ください。とりわけNFPA79は電気の規格であるため、機械のリスクアセスメントなどに関する言及はほとんどありませんが、18.6で要求されている機能試験の項目においては安全防護などの機能確認が要求されており、ISO12100の安全の基本原則をはじめとする各種安全対策全般が指し示されていると言えます。つまりAHJがよいと言った(認可を受けた)から問題ないという考えではなく、リスクアセスメントを実施した上での適切な安全設計をお勧めします。

三笠精機では、リスクアセスメントの手法解説、安全対策の提案、認証機関(NRTL)のフィールドエバリュエーション手配や審査結果解説など、さまざまな対応が可能です。

認証機関はコンサルティング業務ができない

メーカーがCEマーキングやアメリカ向けフィールドエバリュエーションで認証機関に評価を依頼することも多いですが、三笠精機にご相談いただく内容の中で多いのが「認証機関に依頼したものの最適な設計変更がどのようなものか答えが出ない」というものです。

認証機関はISO/IEC 17021(適合性評価―マネジメントシステムの審査および認証を提供する期間に対する要求事項)に適合した機関です。その中の要求に、コンサルティング業務の禁止があります。試験官が不合格者に対して試験直後に解説をして、その後またその試験官が試験に立ち会うという関係は癒着を生みやすいため避けるべき、ということが背景にあるのでしょう。認証機関に評価業務を依頼しても、得られるものは評価レポートのみで、装置を具体的にどのように改造するのが妥当かという答えを得ることはできません。

また同様に、認証機関がコンサルタントを紹介することも基本的にできません。認証機関に評価ではなく技術ミーティングなどの形で依頼した場合は、ある程度の回答は得られることもありますが、認証機関の評価エンジニアが装置や制御盤の具体的な設計や構造に詳しくない場合もあります。

そのため、特に初めて認証機関に依頼される際は、先にコンサルタントに確認いただくことをお勧めします。コンサルタントを選ぶ基準としては、包括的な提案ができるかどうかを重視されるのがよいでしょう。規格のコアの部分は認証機関に詳しい方がいますし、第三者からみても、装置メーカーやコンサルタントよりも認証機関の解釈が優先されます。

一方で認証機関は、立場上、依頼された規格についてのみ評価を行うため、例えばRoHSへの適合などはメーカー独自に確認することが重要であり、認証機関にその評価を依頼することは多くありません。言い換えると、費用対効果の観点から、メーカー側で対応した方がよいという意味です。それでも、RoHS対象品目であるのに、自己宣言書にその内容が記載されていないのもよくありません。

三笠精機では、機械類全般を中心とした認証評価の立ち合い実績が豊富にありますので、包括的かつ最適な提案を行うことが可能です。法令や規格にもれなく適合し、スムーズに世界各地へ販売されるまでの総合的なお手伝いをさせていただくことができますので、是非ご相談ください。