【UL508A・EN60204-1対応 制御盤】設計・製作工数最適化に欠かせない情報とは?

2026年9月28日

米国向け、欧州向けなどの海外仕様の装置では、制御盤についてUL508AやEN60204-1などの規格への対応が求められることがあります。

このような制御盤の設計・製作を依頼、または請負う際「既存機と同じように作る」「UL対応の制御盤を作る」といった情報に、見積りなど初期の段階でひと手間加えるだけで、納品までスムーズに案件が進みます。

「最適な見積りのもと手戻りなく設計・製作を進める」ために、今回は制御盤の設計・製作をさまざまなパートナーとともに実践してきた私たちだからわかる、「発注のポイント」「初期段階で揃えておくべき情報」を解説します。

チェックポイント① 「仕向地」と「適合規格」は明確か?
チェックポイント② 既存機ベースか? 新規開発か?
チェックポイント③ 用語や表記のルールは決まっているか?
チェックポイント④ 「設置環境」と「盤外設備」は明確か?

ここから各項目でやるべきこと、共有すべき情報の整理方法・ポイントを詳しく説明します。

チェックポイント① 「仕向地」と「適合規格」は明確か?

装置や制御盤そのものだけでなく、どこにどんな仕様で納品するか、すなわち「仕向地」「適用規格」を明確化すること。これは当たり前のように思えますが、意外とクリアになっていないケースが多いのではないでしょうか。

単に「海外仕様」「UL対応」「CE対応」とするのではなく、下記をできうる限り明確にするのが大切です。

・使用国・地域

・適用する規格

・ULラベルの要否

・装置としてCEマーキングまで必要なのかどうか

・制御盤だけを対象とするのか、機械全体を対象とするのか

例えば米国向けであれば、UL508A対応に加えて、必要なSCCRやAFC(Available Fault Current)などがわかればより適切な部品選定・見積りが可能になります。
特にAvailable Fault Currentは、工場側のご担当者に確認いただく必要がありますが、見積りと設計・製作の精度をあげるためにぜひ事前に情報を収集してください。

チェックポイント② 既存機ベース?新規開発?「『既存機ベース』の場合」

次のポイントは、「既存の類似機をベースにするか」「新規に装置を開発するか」をクリアにすることです。

まずは「既存の類似機をベース」にする、つまりゼロから設計・製作を行う必要がないケースを説明します。

既存の類似機がある場合

既存の類似機がある場合「モノがすでにあるケース」と「元図があるケース」に分けられると思われます。すでにある制御盤そのものをベースにする場合、下記資料があると見積りとその後の設計・製作をスムーズに進めることができます。

「『既存の類似機』に+α」 これがあるとスムーズに進む8カ条

  • 回路図
  • 部品表
  • 盤内配置図
  • 盤外形図
  • 端子台図
  • I/Oリスト
  • 機械仕様書
  • 既存機の写真

もちろんすべて揃っていることがベストではあります。ただ難しいケースも多いと思われます。

ここでのポイントは「現在使用されている資料をなるべくご共有いただくこと」。設計・製作者が装置の規模や機能を把握しやすくなり、作業がスムーズに進みます。

元図がある場合

次に、国内向けの元図がある場合です。一見するとこれをそのまま海外規格に適合させれば良さそうに思えます。しかし、そのまま海外規格に適合できるとは限りません。

例えばUL508A対応では、使用部品、電線、保護機器、SCCRなどについて確認が必要となり、部品変更や回路変更が発生する場合があります。

ここで重要になってくるのは、「既存設計をどこまで踏襲する必要があるのか」というポイントです。

  • 機能が同じなら部品変更可能
  • 主要部品は既存機と同じものを使用したい
  • 部品型式を変更してはならない

などが、見積り時に明確になっていると海外規格への適合がスムーズです。

チェックポイント② 既存機ベース?新規開発?「『新規開発』の場合」

新たに開発する場合、当然ながら装置だけでなく元となる図面もありません。その場合、装置に関する仕様その他をできるだけ具体的にお知らせください。

図面はないが仕様は決まっている場合

図面はないものの仕様が決まっている場合、各要素を「電源・負荷」「制御」「安全」の3軸で整理すると、設計・製作現場に伝わりやすいです。

電源・負荷

・電源・電源電圧、相数、周波数

・モーターの台数・容量・定格電流

・インバータ・サーボ

・ヒーター・電磁弁等の負荷

制御

・PLCメーカー・型式

・I/O点数

・HMI

・通信方式

・リモートI/O

安全

・非常停止

・安全扉

・ライトカーテン

・安全リレー・安全PLC

・STO

・必要なPL/SIL

仕様も決まっていない場合

ここでのポイントは「ステータスを明確にすること」です。どこが「確定」でどこが「予定」、「未定」であるのかがわかるだけでも、条件を整理しやすくなり見積りの精度とスピードも向上するのです。

実際に、「新しい装置であるため多くの部分が確定していない」というケースは多いと思われます。あいまいなままにせず、決まっていないことは「未定事項」として現場に知らせることがポイントです。

ソフト・デバッグにも注意が必要!

新規開発で見落としがちなのが、「ソフトウェア」や「デバッグ(バグを見つけ出し、原因を調べて正しく修正すること)」です。

見積り時点では想定できない仕様変更や技術的課題、追加のデバッグ・認証対応などが発生した場合には、その都度協議のうえ追加見積りとなる場合があります。そのため、このポイントを押さえておくだけでかなりの工数が削減されうるケースもあります。

・PLCプログラム

・HMI画面

・通信設定

・サーボ・インバータ設定

・実機デバッグ

・機械との動作調整

・FAT・現地調整

これらは、見積り段階において実際の工数を正確に予測できない場合が多いと言えます。特に新規装置においては、実機を動かして初めて判明する問題や、機械側との調整によって追加のソフト変更が必要になることがあるからです。

さらに、認証・適合確認のタイミングや役割分担が不明確な場合、後から安全回路の変更、部品変更、追加試験、ソフトウェア変更、追加書類などが必要になる可能性もあります。

難しくはありますが、初期見積りに含まれる設計・製作・デバッグ・認証対応の範囲をできるだけ事前に確認しておくことをお勧めします。

チェックポイント③ 用語や表記のルールは決まっているか?

制御盤には、機器番号、端子番号、ケーブル番号、信号名称など、多くの識別情報があります。盤内の部品名称や識別方法については、制御盤の設計・製作者側で方針を決められる場合もあります。

一方で、

・センサー番号

・モーター番号

・バルブ番号

・シリンダー番号

・操作スイッチ番号

・盤外端子番号

・ケーブル番号

・I/O信号名称

など、機械側の機器と直接関係する識別情報については、装置メーカーの設計図面や資料と合わせる必要があります。例えば、装置設計図でモーターを「M101」としているのに、制御盤図では別の番号を使用すると、図面間の対応関係が分かりにくくなります。

既に装置側で機器番号やタグ番号のルールがある場合、それらを共有することはプロジェクトをスムーズに進める鍵となる場合もあります。

チェックポイント③ 用語や表記のルール 「英語表記・用語の指定もポイント」

海外向け装置では、日本語で作成された図面や仕様書を英語化することがあります。このとき重要なのが、各ドキュメントで使用する名称・用語を統一することです。同じ機器を扱う場合、それぞれの名称が一致していることが望まれます。

また、発注元やエンドユーザーからさまざまな指定がある場合、その情報を共有するとスムーズにプロジェクトが進行します。

名称・用語が統一されているのが望ましいドキュメント

・回路図

・I/Oリスト

・部品表

・操作説明書

・HMI画面

・機械図面

・取扱説明書

発注元・エンドユーザーからの指示で現場が知りたいこと

・英語名称一覧

・用語集

・過去機種の英語図面

・機器タグ一覧

・指定の略語

・HMIの表記ルール

用語に関するワンポイントアドバイス

名称・識別方法・英語表記について指定がある場合は、その指定内容に基づいて設計・製作者が図面等を作成します。

一方、特に指定がない場合は、設計・製作者側で一般的な表記方法や識別方法を提案・決定できる場合があります。
ただし、センサーやモーターなど装置全体に関係する機器については、指定がない場合でも、装置メーカーの図面・仕様書・取扱説明書などとの整合性を考慮して決定することが重要です。

チェックポイント④ 「設置環境」と「盤外設備」は明確か? 

制御盤の仕様だけでなく、意外に見落としがち・共有漏れが発生しやすいのが「設置環境」。また、「どこまでが設計・製作者の範囲となるか」があいまいなまま案件が進むことも実は多いです。ここをクリアにすることは、工程の後になればなるほど効いてきます。

設置環境でチェックすべきポイント

・屋内/屋外

・周囲温度

・粉塵・水・腐食環境

・必要なIP・NEMA等級

・冷却・ヒーターの要否

どこまで担うか 「切り分け」で見落としやすいポイント

・中継BOX

・操作盤

・盤外ケーブル

・センサー

・モーター

・盤外端子箱

UL508A・EN60204-1対応制御盤を依頼する際のポイント まとめ

ここで今まで記載した事項を一覧とします。

装置の種類 既存機ベース/新規開発
既存資料 回路図、部品表(実装位置、所掌範囲を明確化したもの)、I/Oリスト等
※PDFは文字検索ができるもの、部品表はエクセル形式のものが望ましい
仕向地 使用国・地域
適用規格 NFPA79、UL508A、EN60204-1(個別規格)等
電源 電圧、相数、周波数、接地方式
負荷 モーター、ヒーター等
制御 PLC、I/O、HMI、通信
安全 非常停止、安全機器、PLr等
SCCR 必要値、Available Fault Current等
環境 屋内/屋外、IP・NEMA等
盤外設備 センサー、モーター、中継BOX等
識別方法 機器番号、タグ番号、ケーブル番号等
英語表記 指定の用語・英訳・略語等
書類・検査 FAT、試験、提出資料等
設計範囲 ハード、ソフト、盤外配線、認証対応等

こうして記載するとかなりの分量であることが見えてきます。

しかし、設計・製作の見積りのタイミングなど、プロジェクトの初期の段階でこれらの情報を共有することが、スムーズな納品や海外における装置・生産ライン構築を成功させる秘訣になると言えるでしょう。