【実例】スケジュール遅延を招く 8つの原因とは?「UL/cUL認証制御盤」

2026年4月21日

制御盤出荷の遅延の原因はどこにあるのでしょうか?「期待通りにうまくいかないことも考慮し、時間に余裕をもって事前準備をすること」が非常に重要なのは、皆さんご存知の通りです。では、具体的に、どこに注意をしなければならないのでしょうか?

まずは、当社の調査による、遅延原因から分析してみます。

さらに、「納品までの流れ」をみながら、この原因の分析を行うと「遅延を起こさないポイント」が見えてきます。

UL508A認証制御盤 納品までの流れをおさらい

ここで、UL508A認証制御盤の「設計」から「製作」の全体フローを見てみましょう。

  • 客先の要求仕様の確認
  • 装置リスクアセスメントを反映した安全回路の検討、単線結線図作成
  • 回路の基本設計
  • 回路・配置の詳細設計
  • 図面・部品手配承認依頼
  • 部品調達
  • 盤製作(板金・組立・配線)
  • 一般検査
  • UL508A規格要求事項の検査 *1
  • 出荷・現場配線・ソフトデバッグ等の現地対応

*1 ULから発行される資格の保有者による検査を示します。なお現在、三笠精機には3名の資格保有者が在職しています。

改めて下記グラフを見てわかるように、スケジュール遅延の原因第1位は「部品調達」のフェーズで、全体の3割以上を占めています。その一方で、これは最もコントロールできない要素です。

遅延の原因第1位は「部品調達の遅れ」

さらに、残念ながら「部品調達」の要素は、設計から製作までのフローでいうと、5番目にあります。そして、1番目の確定した仕様に合わせて設計を完了させないと部品が決まりません

基本的に部品1点でも欠品していると認証ラベルを制御盤に貼り付けることはできません。完成品である必要があります。

なお、場合によってSCCR対応のために海外製の特殊ヒューズを使用することがありますが、納期6カ月以上の場合もありますので注意が必要です。

その他に、特殊部品(自社開発品や特殊仕様で認証品への置き換えができない部品)が存在する場合、認証機関による個別評価や製作を依頼するUL508A認定制御盤メーカーへのプロシージャ申請が必要なのでその期間も考慮しなければなりません。

従って、スケジュールの遅延を防ぐためには、「どれくらい前に仕様を確定させる設計を着手し部品を特定できるのか」にかかっています。

そもそも「事前準備がしっかりできていなかった場合」どうなる?

事前準備ができていなかった場合、生じるのはスケジュール遅延のみではないです。

設計期間が短い 特急対応・特別対応によるコストアップ
製作・検査期間が短い 特急対応・特別対応によるコストアップ
部品調達期間が短い 通販サイトでの購入や海外からエアー便での購入や部品二重手配等でコストアップ
仕様変更、安全回路変更 再設計、部品再手配、改造でコストアップ

装置出荷スケジュールに間に合わずラベリングの制御盤を待てず、現場配線の準備、ソフトデバッグと試運転のためにとりあえず盤が欲しいという場合も三笠精機の経験上、よく要求されます。

その場合、製作フローの他の要素は調整できますが部品がネックとなってきます。設計通りの部品を待っている間に機能できる部品の二重手配と運送費用、規格再検査費用等も発生してしまいます。

つまり、全てコストに直接関連します。準備期間はコストダウンに比例すると考えて良いでしょう。

ここまで事前準備の重要性を理解していただけたでしょう。ではどんな情報があればUL/cUL認証制御盤の設計・製作をスムーズに進められるのか本題に入ります。

スムーズに進めるための8つのポイント

ポイント1 使用地域・適用規格の明確化

まず、下記を明確化する必要があります。

・アメリカ/カナダ向けで UL 508A規格適用範囲の制御盤なのか

・設置州、NEC適用年度(例:2020 / 2023)

・他の規格も対応が必要なのか

これらを未定のまま進めると、最初からやり直しになる可能性があります。

ポイント2 制御盤の用途

用途も今一度の確認が必要になります。

・産業機械用?(NFPA79対象)

・建物設備用?

・危険場所設置装置用?

ポイント3 電気仕様

この「電気仕様」が最も重要となります。

・定格電圧(例:600V、480Y/277V、208Y/120V、120V)

・周波数(全域で60Hzが標準)

・配電方式(例:Single Phase、Three Phase Wye、Three Phase Delta)

・接地/非接地、線式(例:L-N+G、L1-L2+G、L1-L2-L3+G、L1-L2-L3-N+G) *注意点 その1

・相数(1φ / 3φ)

・要求SCCR値―短絡電流定格(例:5kA、10kA、14kA、25kA、35kA、50kA、65kA) *注意点 その2

*注意点 その1

接地/非接地、線式で、日本(50/60Hz、200V系が主流)とは電圧・規格が異なります。

*注意点 その2

SCCRが変わると最初から電源回路部品の選定し直し、回路構成変更となります。また、部品サイズも大きく変わると筐体自体の外形サイズも変更が必要です。

ポイント4 環境情報

・設置場所(屋内、屋外)

・設置環境(例:一般、食品、クリーンルーム)

・使用周囲温度/湿度(例:25℃/40%)(なお、「UL508A」の適用範囲は40℃以下)

ポイント5 安全回路

この際、リスクアセスメントの結果を反映した、「非常停止スイッチ」「セーフティドアスイッチ」などの安全入力機器と「期限源のモーター」や「エアーシリンダー」などの停止対象、停止カテゴリ(例:0,1,2)の関係を表した表が必要になります。

なお、リスクアセスメント未実施や表のまとめ方についても、三笠精機のコンサルティング業務では承っております。お問い合わせ下さい。

ポイント6 型式、定格情報付き外部負荷リスト

「Motor M1 3相 2kA 480V 3A、Heater HT2 単相200W 200V 1A」を例に説明します。

「SCCR対応回路構成の検討」とブレーカーや過負荷リレーなど「盤内部品の選定」をするための情報を決めることがまず大切です。ここが決まらないと手戻りが発生し、コストがアップします。なお、参考図面に詳細記載があれば省略が可能です。

ポイント7 筐体構造

・板金設計か購入品か(例えば「RITTAL認証筐体」はラインナップが豊富でオススメです)

・保護等級(例:Type 1, Type 12)

・設置方法(例:自立盤、装置組み込み)

・材質、指定塗装色等

三笠精機で設計・製作を実施する場合、製作仕様書などの情報は設計着手時にまずお伺いします。

ポイント8 最適な設計ができるのに役に立つ資料を揃える

・単線結線図

・国内向け装置の図面や類似機の参考図面(文字検索とコピー可能な図面が望ましい)

・和英コメントと機器の型式付きI/Oリスト(電源容量計算用)*なお、DC24V 仕様についてNPNロジックの回路やNPNタイプのセンサー類がある場合、基本的にPNP仕様に変更が必要です

・制御盤のタイトル銘板、スイッチ・ランプ類銘板などの英語表記のリスト(装置用マニュアルの表記に合わせる)

・外部機器配置図、装置全体図(複数の制御盤、操作盤、中継ボックスがあって機器の配線ルート等を考慮した配置設計ができる)

・既存制御盤、設備の写真

意外な落とし穴 「国内向けのベース図面があり、盤内部品は全て認証品へ置き換えたから大丈夫」ではないの!?

実は認証品にはカテゴリが様々あります。

値段が高い認証品への置き換えが不要という部品・回路構成もあります。また、下記のようなポイントも注意が必要です。


・SCCR対応のための回路図の組み合わせ方
・正しいカテゴリの部品選定方法
・正しい部品配置方法等


他にも、電気図面で指示しきれない製作に関する細かい要求(ボンディング、各回路の配線ルール・ルート、動力回路のタップルール、表示・警告ラベル類等)も全て満たさなければなりません。

規格の原文は多くの場合、英語で記載されますが、日本語への翻訳が適切でない場合や設計者・製造者の経験、ノウハウによって解釈が異なることがよくあります。

誤解すると認証機関やAHJに指摘を受け、最初から設計の見直しや大規模な改造が発生する可能性があります。

装置出荷スケジュール通りとなるように海外向け制御盤設計・製作、装置の安全コンサルティングの経験が豊かな三笠精機が初期段階から色々と仕様確認・進め方についてアドバイスして最適な設計・製作ができますので事前準備に注意しなかったことによるコストアップや規格の誤解・設計経験不足による手戻りとならないように初期段階でも早めにお問い合わせください。

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