制御盤の設計手順とポイントについて解説

2023年8月9日

制御盤を製作する際にはまず行うのが設計ですが、この設計には、作業開始から終了まで様々な工程があります。そのすべての工程においてほんの少しでもミスがあれば、後々重大なトラブルに発展する恐れがあり、非常に重要な作業です。

ここでは、制御盤の設計に関して、その手順とポイントを解説します。

1. 制御盤設計とは?

制御盤とは、配電盤から受け取った電気を制御して機械や設備を仕様通りに動作させるために電気制御を行うものです。シーケンス制御を用いることで複雑な制御も可能となりますが、制御が複雑になればその分設計も複雑になるため、難易度の高い制御盤の設計には経験豊富な設計者が必要となります。

制御盤の設計完了までにはいくつものステップがあります。仕様の確認から単線結線図の作成、展開接続図(複線図)の作成、さらには筐体内外の設計も行わなければなりません。その他にも、部品表の作成や端子台表の作成など、設計に関わる作業は数多くあります。

2. 制御盤設計の重要性と役割

制御盤を製作する際の最初の作業であり、かつ重要な役割を持っているのが、制御盤設計です。設計が間違っていると機械が動作しないばかりか、重大な事故につながる可能性もあるため、ミスのない適切な設計を行うことが重要です。

また、設計の仕事には、部品表やレポートの作成など、設計の実務以外にも様々な仕事があります。設計が早く終わっても、これらの仕事に時間がかかると、その分製造コストが上がり、納期も長くなってしまいます。

正しく設計することはもちろんのこと、これら設計に付随した諸作業の作業工数をいかに減らすかが、コスト削減と納期短縮に重要となります。

3. 三笠精機での制御盤の設計手順について

ここでは、三笠精機で行っている制御盤設計の一般的な流れをご説明します。

三笠精機では総合電気設計用のCAD「EPLAN」を使用しています。EPLANは電気設計だけでなく、外部ソフトで設計したSTEPデータを取り込み、登録などをして3Dの”配置設計”ができるソフトです。

従来は線を引き、部品に番号を振り、使用する部品の部品表を作る工程を手作業で行っていましたが、EPLANではこれらの作業が自動化できるため、作業工数が削減できます。必要なパーツデータをEPLAN Data Portalからダウンロードしドラッグ&ドロップすることで3Dデータを読み込ませることができ、そのまま図面内に配置できます。これにより、使用する部品の3Dデータを別途作図する必要がなくなるうえ、穴あけ加工図も自動で作成されます。

実際の設計作業は以下の手順で行われます。

3.1. 事前調査・仕様確認

設計を始める前に、まずは事前調査を行います。使用環境や用途をしっかりとヒアリングし、消費電力や寸法などの仕様が、お客様の要望を満たしているかを確認します。

3.2. 単線結線図の作成

単線結線図とは、全体の接続を確認するために機器類を単線で接続した図です。単純化されているのでシステム全体の概要がよくわかりますが、全体が理解できている場合はこの工程は飛ばして次の工程に入ることも少なくありません。

三笠精機でも多くの場合、簡単に手書きレベルで図面を描いたうえで、すぐに展開接続図(複線図)をEPLANで書いていきます。

3.3. 展開接続図(複線図)の作成

展開接続図(複線図)とは、単線結線図を複線で繋いだ図のことです。単線図よりも回路を正確に表しています。この展開接続図は、実際に使用する部品をデータベースへ登録しながら作成します。

3.4. 登録の無い部品の詳細登録

使用する部品はそれぞれに形状が異なるため、この形状が分からなければ筐体内部の3D設計はできません。EPLANではクラウド上に登録されている部品の3Dデータを読み込んで形状を確認しますが、登録がない部品は3Dデータやパーツ番号などの登録を行います。

また、部品や端子台の接続ポイントを登録することで、接続をまとめた布線表を表示できるようになります。

3.5. 3D配置

展開接続図を作成する際に作られた部品リスト中の部品をEPLANのレイアウトスペースにドラッグ&ドロップし配置します。

3.6. 外観図の作成

部品の3Dデータを取り込み、筐体内外の適切な箇所に部品を配置し終わったら、EPLANで2Dの外観図を出力します。

3.7. 内部配置図の作成

部品が互いに干渉しないように筐体内部の配置を設計し、2Dの図として出力します。

3.8. 部品表を作成

EPLANでは、部品を配置する際、展開接続図を書きながらマスターデータから部品を割り当てるか、もしくはマスターデータになければ部品登録して展開接続図に配置していきます。この際、使用した部品は自動的にリスト化されており、部品リストは表として出力できます。

3.9. 端子台表(端子配列図)の作成

端子台表(端子配列図)とは、端子台にどの端子が配置されるかが書かれた表(図)です。この表は部品表と同様、設計しながら自動的に作成されているので、設計終了時にレポートとして出力することで得られます。端子台の配列や端子への記名は、主に設計の最終段階で調整されます。

3.10. 線番号、リファレンス、IOコメントなどの最終調整

設計が一通り終わり最終段階になると、線番号、リファレンス、IOコメントなどの最終調整が行われます。この調整が終了すると使用する部品が確定します。

3.11. 部品の手配

部品が確定すると回路設計の仕事は一旦終了し、部品の手配が始まります。基本的には余裕をもって手配しますが、急ぎの場合は部品表ができたタイミングで手配することもあります。

3.12. ラダープログラムの作成

PLCを使用する場合には、ラダープログラムを作成する必要があります。このプログラムを組むことで、複雑なシーケンス制御が可能となります。

シーケンス制御とは、必要な箇所の電気を必要なタイミングでオン・オフすることです。このオンとオフを行うタイミングを図で表すとはしご(ladder)のような形状となるため、ラダープログラムと呼ばれています。必要に応じてこのラダープログラムを組み、PLCに読み込ませます。

3.13. 制御盤の製作

設計が終わり、部品が揃ってきたら、いよいよ制御盤の製作に入ります。9割程度の部品が揃ってからの着工が理想です。

製作は図面通りに行われるため、部品が全て揃っていれば特に問題は起こらないはずですが、まれに設計に問題が見つかり、修正が必要となる場合があります。問題が起きたら、配線を回路図と違う個所に繋いでいないか線番号を確認したり、断線していないかテスターで導通チェックを行ったりして、問題個所を特定します。

設計及び製造の過程で起こった問題を解決し、仕様書通りに動作することと安全性が確認できれば、制御盤の完成です。

4. 三笠精機の制御盤設計に関する事例

株式会社特研メカトロニクス様より、高機能かつ広角で人物検出可能な安全監視AIカメラ用の制御盤を設計して欲しいとのご依頼をいただいた事例をご紹介します。

このAIカメラは、建設現場での接触防止のため、バックホウ(ショベルカー)やキャリアダンプの後方監視に使用されます。これまでも後方監視カメラは使用されていたとのことですが、動作が不安定なうえ制御盤が大きく、ただでさえ狭い運転席のすぐ近くに設置しているため、作業の障害となっていました。そこで、耐振動性の高いカメラに置き換えたうえでコンパクト化を実現するための設計が始まりました。

既存の制御盤のサイズはW200 x H300 x D130mmでしたが、部品の配置変更や小型部品の使用、増し締めやトルク管理の必要がないPush-in式の部品と端子台を使用することで、盤のサイズをW210 x H210 x D130mmに小型化しました。メンテナンスフリーで耐振動性の大幅向上も実現。将来的な運転席の外への設置を見込んでIP65対応の設計を行うと共に、カメラ増設に対応できるよう高い定格の部品を使用しています。

既存の制御盤の小型化やメンテナンスフリーによるコスト削減だけではなく、今回のような将来的な変更に備えた設計にも対応するこの柔軟性こそが、三笠精機の強みとなっています。

5. まとめ

制御盤の設計には様々な工程があり、多くの工数を要します。この作業工数を大幅に削減する便利なソフトがEPLANです。三笠精機では、このEPLANを経験豊富な設計者が使用することで設計時のミスを減らし、コスト低下と納期の短縮を実現しています。

迅速な設計と納品はもちろん、お客様のご要望に応じた柔軟な対応・提案にも自信を持っています。制御盤に関するご相談は、どのようなことでもぜひ三笠精機へご連絡ください。