制御盤組立の配線作業って?電線の種類や作業の流れ・ポイントを解説

2023年12月1日

制御盤組立において作業者の技術が特に問われる工程が配線作業です。制御盤には多くの部品が使われており、部品が増えれば増えるほど配線が複雑になります。その配線を一つでも間違えると正常に動作しない恐れがあるため、図面を見ながら細心の注意を払い作業する必要があります。

この記事では、制御盤組立の配線作業の流れやポイントについて解説します。

1. 制御盤組立の配線作業の重要性

配線作業は、ただ正確に配線すればいいというわけではなく、後々のメンテナンス作業や故障修理などを見据え、見やすく分かりやすく配線する必要があることです。

配線作業では、機器類と端子台を配線するだけではなく、たくさんの配線を整理整頓し、どれがどの配線か、すぐに分かるようにしておく必要があります。修理の際は作業者が故障箇所の配線を目で追わなければならないため、配線が混み入っていると状況把握に時間がかかってしまいますし、修理の際にミスが生じる可能性も高まります。

熟練した作業者が配線した制御盤は整理整頓が行き届いており、制御盤を開けた時に美しいと感じます。このような配線作業ができるようになるには、経験の積み重ねが重要です。

2. 配線作業に使用する主な備品

配線作業の際には、まず配線を作る必要があります。配線を適切にカットして被覆を剥ぎ、端末処理をおこないます。

配線には、用途に応じて電線とケーブルがあります。両者は同じものとして扱われているケースをよく見かけますが、実際は少々異なっています。

また、たくさんある配線を束ねるためには結束バンドが使用され、結束バンドでまとめられた配線の束は配線ダクトに収められます。

以下、電線とケーブルの違いなどを含め、これらの備品について解説します。

2.1. 電線の種類

電線とは、電気が流れる部分である導体を電気を流さない絶縁体で覆っているものを指します。導体が絶縁体で覆われているため、感電やショートをせず安全に使用できます。この電線には用途によりいくつかの種類があります。

2.1.1. IV(ビニル絶縁電線)

IV線は幅広く使用されている電線で、一本もしくは複数の銅線をより合わせた銅線がポリ塩化ビニルで覆われています。定格電圧が600Vで定格温度は60度、600V以下の一般電気工作物の配線に用いられます。

2.1.2. KIV(電気機器用ビニル絶縁電線)

制御盤によく用いられる電線がこのKIVです。IVとの違いは可とう性、つまり柔軟性にあります。KIVのほうがより細い素線で構成されているため、IVよりもより柔軟です。定格電圧と温度はそれぞれ600Vと60度です。

2.1.3. KV(電子・通信機器用ビニル絶縁電線)

KVは電子機器や通信機器の配線に用いられる電線です。電子機器や通信機器は低圧で動作するため、このKV線の定格電圧はIV線よりも低く、その分可とう性が高くなっています。

2.1.4. WL1(600V架橋ポリエチレン電線)

WL1は日本鉄道車両工業会の規格であるJRIS規格に規定されている車両用の電線で、定格電圧は600Vです。絶縁体には架橋ポリエチレンが用いられており、電気的特性に優れています。また、軽量で耐熱性が高く難燃性であり、許容電流も大きいことも特徴です。

2.1.5. MTW(耐熱ビニル電線)

MTWはMachine Tool Wireの略称で、複合規格となっています。アメリカのUL、カナダのCSA、日本国内のPSE規格を取得しているため、制御盤の配線にMTWを使用すれば複数の国々で規格を満たしていることになり、試験がより簡略化できます。

2.2. ケーブルの種類

ケーブルと電線との違いは、絶縁体をシースで覆っているかいないかの違いです。絶縁体のみだと強度が弱いですが、シースで補強すると、引っ張っても切れにくく、導線が外圧を受けても傷つきや断線をしづらくなります。しかし、シースがあることで曲げにくく線が太くなってしまうため、使用場所が限られます。

一般的には、外圧が発生しにくい制御盤内部には電線が使用され、挟み込みや引っ張りなどが発生する可能性が高い外部にはケーブルが用いられます。

2.2.1. シールドの有無

シールドは細い金属線を編んだもので、絶縁体とシースとの間に設置されます。金属は、アンテナとなり電磁波を吸収すると同時に反射する性質を持っています。現代社会にあふれるさまざまな電磁波が通信線により吸収されると、ノイズとなって通信を妨害してしまいます。

そこで、通信線を守るために金属製のシールドが用いられます。シールドを設置することで外部からの電磁波が反射され、内部の通信線は保護されます。微弱な電気信号のやり取りをおこなう際には、このシールド付きのケーブルが用いられます。

2.2.2. ツイストの有無

ツイストとは、2本の導線を撚り合わせることを言います。撚り合わせることで外部の電磁波によるノイズを打ち消す効果が得られるため、電話線などノイズが発生しやすいケースではツイストケーブルが使用されてきました。

2.3. ケーブルの種類

制御盤など配線を大量に使用する機器では、配線を整理するために結束バンドと配線ダクトが使用されます。

結束バンドは複数本の配線を縛るために使われます。配線をまとめることで空間がすっきりとして、配線が確認しやすくなります。結束バンドを使用しないと見た目が乱雑になるだけでなく、作業中に配線に引っ掛かり配線を破損してしまう恐れがあるため、作業する際は注意が必要です。

配線ダクトは配線を収めるために壁などに設置されています。配線ダクトがないと、空間中に配線の束が浮いた状態になってしまい、配線が邪魔をしてメンテナンスが難しくなってしまいます。結束バンドで束ねられた配線の束を配線ダクトに入れて整理することで、すっきりと、かつ安全に配線を保てます。

3. UL規格の電線について

UL規格は、アメリカの認証機関であるUnderwriters Laborratories Inc.による規格です。製品をアメリカへ輸出する際にはこのUL規格の認証取得が必要となります。

> 関連記事:UL規格とは?取得する必要性や認証方法について解説

3.1. UL電線と国内向け電線の違い

UL電線と国内向けの電線の違いには、規格が異なる点が挙げられます。日本のJIS規格はアメリカのUL規格にも対応していますが、UL電線はあくまでUL規格に適合した電線であるので、JIS規格には適合していない可能性もあります。つまり、アメリカではOKでも日本ではNGということも起こり得ます。

3.2. UL電線の主な種類・色

UL規格に適合した電線には、AWM(Appliance Wiring Material)やMTW(Machine To Wiring)といった電源制御回路に使用されるケーブルがあります。電線の色はメーカーにより異なりますが、黒、白、赤、緑、黄、茶、青、橙、桃、灰、若草、空、紫、アースに使用される黄/緑があります。

3.3. UL電線とフェルール端子

電線の先端に取り付ける端子類にもUL規格があります。UL規格の認証を取得する際には、UL規格に適合した電線とともに、UL規格に適合したフェルール端子や各種端子を使用しておくことが大切です。

4. 制御盤の配線作業フロー

制御盤の配線作業のフローは会社によって異なりますが、一般的には以下の手順でおこなわれます。

4.1. 部品の取り付け

まずは、筐体内に各種部品を取り付けるための穴あけから始まります。よく使用されるネジのサイズはM4やM5です。必要なサイズの穴をあけ、タップ穴加工をおこない、配線を収納するダクトや部品を設置するためのDINレールを取り付けます。部品は直接制御盤の筐体に固定するものとDINレールに取り付けるものとがあります。

加工の際は保護メガネを始め適切な保護具を装着し、工具の誤使用やバリなどによる怪我をしないように注意する必要があります。

4.2. 主回路の配線

続いて主回路の配線がおこなわれます。主回路は、電源から電気を受け取り分配する回路です。この回路にはブレーカーやスイッチなどが取り付けられます。基本的に電圧が高い回路から配線されます。

4.3. 制御回路の交流の配線

次に制御回路の交流の配線が行われます。制御回路とは、主回路から受け取った入力信号を処理して機械をコントロールするための回路です。モーターやヒーターなどには交流が用いられることが多いため、このような回路には交流が流れます。

4.4. COMとアースの配線

COMの名前は、共通という意味のcommonからきています。電気回路では複数の回路で共通して使用できる配線があり、このような共通して使用できる線をCOM線と呼んでいます。

アースは接地ともいいます。漏電した際の電気をアース線を通して地面へと逃がすことができる必須の安全対策となっています。これらの線をつないでいきます。

4.5. 制御回路の直流の配線

機器を制御する際、直流電圧が使用されることがあります。主に電圧の変化により出力を変える場合に使用されます。使用する電圧は低いため、細い配線が使用されます。

4.6. 通信ケーブルの配線

最後に通信ケーブルを配線します。通信ケーブルはデータのやり取りをおこなうためのもので、パソコンなどの機器類と接続されます。

5. 配線作業のポイント

配線作業には、作業効率や耐久性、安全性を向上するためのポイントがあります。その3つのポイントを解説します。

5.1. 回路図を参照しながら作業を進める

配線の基本は、プリントした配線図を確認することです。特にわかりにくい場所にはメモや線を追加して理解しやすいようにしておくと効率が上がります。また、どの工具が必要かを事前に確認し準備をしておくことで、作業時間を短縮できます。

5.2. 線番をマークチューブに印字しておく

制御盤内の電線には必ずといっていいほど印字されたマークチューブが取り付けられています。このように印字をすることで、そのケーブルが回路図の中でどの線に相当し、どの機器とつながっているかを知ることができます。配線の際にはミスの防止に、メンテナンスをおこなう際には作業効率の向上につながります。

5.3. ケーブルの曲げ方などを工夫する

電線を取り付ける際には、長さとともに曲げ方も大事な要素となります。制御盤内はスペースが限られているうえ、機器の位置も固定されています。電線の長さを適切に確保しつつ空間に沿って無駄なく曲げることで、よりきれいな配線が実現します。曲げの半径には余裕を持たせ、むやみに小さくしないようにすることが大切です。

また、電線は機器に合わせてクセを付けてから端子を圧着することも大切です。このような工夫をすることで耐久性や安全性が向上し、メンテナンス性も高まります。

6. まとめ

制御盤組立の配線作業は技術が問われる作業です。上手に作業をこなすためには、適切な備品を使いつつ、さまざまな工夫を凝らす必要があります。

ここでご紹介したような丁寧な作業によって初めて、機能も見た目も優れた配電盤が完成します。三笠精機では、お客様にご満足いただける制御盤の設計・製造で信頼をいただいています。制御盤の配線でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。