フィールドエバリュエーションとは?NRTL認証との違いや事前準備を解説

2024年2月2日

北米へ製品を輸出する際には、認証取得が求められることがあります。

通常の認証取得プロセスでは、製品を認証機関へ送付して検査を受ける必要があるため、準備の手間と時間がかかります。しかし、既存の装置や設備をカスタムしたものなど、1台だけ輸出する際には、フィールドエバリュエーションという認証試験をおこなうことで、製品を認証機関へ送らずに最終設置場所での検査が可能になります。

この記事では、このフィールドエバリュエーションについて解説します。

1. Field Evaluation(フィールドエバリュエーション)とは

Field Evaluation(フィールドエバリュエーション)とは、認証機関の検査場内での検査ではなく、設置場所での検査で使用許可が得られる簡易的な認証検査です。

一般的に、北米の工場や建物に設置する製品を輸出する際には、製品を検査機関へ送り検査を受け、合格することで認証を取得する必要があります。しかし、量産品ではなくカスタム品など1台のみの出荷の場合は、より簡易なフィールドエバリュエーションを取得することで北米での製品の使用が可能になります。

フィールドエバリュエーションはANSI(米国規格協会)のNFPA79(米国電気工事規程)に準拠しており、工場での検査が必要なく、最終設置場所で検査がおこなわれます。この最終検査はULなど行政の認可を受けた機関によりおこなわれ、試験に合格するとフィールドエバリュエーションラベルが付与されます。

つまり、フィールドエバリュエーションのシステムを使うと短期間での検査が可能となります。また、検査は非破壊検査ですので、現地に設置した装置を破損する恐れもありません。既存製品のカスタム品を輸出したい場合には、このフィールドエバリュエーションの認証を取得するケースが多くなっています。

ただし、フィールドエバリュエーションは毎年検査が必要になるうえ、カスタム品単体のみが対象となりますので、長期間使用する場合や複数台販売する際にはNRTLの認証を取得することになります。

2. 北米の電気安全認証について

認証は一つの機関で実施する訳ではなく、役割ごとにさまざまな機関があります。ここでは北米の電気に関する安全認証と関連機関をご紹介します。

2.1. OSHA (Occupational Safety and Health Administration)

OSHAはアメリカの労働安全衛生管理局です。この機関では1970年に制定された労働安全衛生法を実行するための規格を定め、職場の安全や衛生環境を整備しています。OSHAが定める規格は労働や生活全般であり、21の分野に分けられています。

2.2. NRTL(National Recognized Testing Laboratories)

NRTLはアメリカの国家認証試験機関であり、OSHAの定めた規格に適しているかどうかの検査および認証をおこないます。特定の機関ではなく、ULなど複数の第三者機関が該当します。

2.3. CSA(Canadian Standards Association)

CSAはカナダの安全規格です。規格の範囲は、電気製品や医療機器、機械および器具などです。規格の作成や変更に関してはCSAグループ内のThe Canadian Standard Associationがおこない、試験および認証はCSA Internationalがおこなっています。

CSA規格に関しては以下の記事も参照ください。

>> CSA規格(カナダ規格協会)とは?製品の安全性やULとの関連を解説

2.4. UL(Underwriters Laboratories Inc.)

ULは製品の検査および認証をおこなう第三者機関です。さまざまな規格の認証をおこなうのみでなく、UL独自の規格も定めています。基本的にUL規格の取得は任意ですが、北米ではUL認証を州法で義務付けしているケースもあり、法的拘束力を持っている場合があります。UL規格は世界的に使用されており、有名な規格です。

なお、UL規格に関しては以下の記事も参照ください。

>> UL規格とは?取得する必要性や認証方法について解説

2.5. AHJ(Authority Having Jurisdiction)

AHJは認証試験の監督機関であり、認証機関がおこなった認証試験の結果を最終的に評価します。認証試験に合格しても、このAHJの許可が下りないと製品の販売および使用はできません。

3. フィールドエバリュエーションとNRTL認証の違い

フィールドエバリュエーションとNRTL認証の違いについて、以下の表にまとめました。これらの大きな違いは、NRTLによる検査は認証機関の工場でおこなうのに対し、フィールドエバリュエーションは最終設置場所で認証検査がおこなわれる点です。そのため評価期間が短く、迅速な評価がおこなえます。

しかし、フィールドエバリュエーションはカスタム品など個別の装置に対しておこなわれるため、同じ型の装置でも設置場所が変わるとその都度検査を受けなければなりません。どちらも一長一短があるため、適切な認証方法を選択する必要があります。

3.1. Field Evaluation認証

特徴

●破壊試験なし

●登録情報は非公開

●製品ごとに現地検査

認証取得までの期間

現地で査定するため短い

対象製品

販売台数の少ないカスタム品

維持費用

なし

現地検査

毎年

工場検査

なし

3.2. NRTL認証

特徴

●登録情報は公開

●型式ごとに認証機関で検査

認証取得までの期間

検査機関でおこなうため長い

対象製品

量産品

維持費用

あり

現地検査

なし

工場検査

あり(年に数回)

4. フィールドエバリュエーションの一般的な流れ

フィールドエバリュエーションが実施できる認証機関としては、ULがあります。ULは世界的な認証機関であり、日本にも支社があります。アメリカ国内でのフィールドエバリュエーションの実施は日本支社のUL Japanで申し込めます。

4.1. 日本国内

認証検査の申請後、日本国内では予備検査が実施され、Preliminary Finding Reportが発行されます。このレポートには是正内容などが記載されていますので、このレポートに沿って予備検査で指摘された相違点の是正処置や修正をおこないます。

4.2. アメリカ国内

アメリカ国内ではアメリカのULにより最終検査がおこなわれます。予備検査での指摘事項の是正が終わると、製品をアメリカ国内の最終設置場所へと送付し、設置します。最終検査で規格を満たせばラベルとともにFinal Reportが発行されます。規定執行官(AHJ)へそのFinal Reportを提出し、規定執行官によりラベルが確認されると、装置の使用許可が下ります。

この使用許可が下りて初めて装置が使用可能になります。

5. UL Japan検査の確認事項

NRTL認証の一つであるUL認証を例にとって、認証検査の確認事項を解説します。

認証検査には予備検査と最終検査があります。予備検査では以下の内容などが確認されます。

●製品内で使用されている電線やスイッチ、ヒューズ、ブレーカーなどの安全重要部品が規格に適合しているか、また、規格上評価された条件下で使用されているか。

●各安全重要部品は回路および負荷に対して十分な定格を有しているか。

●活電部が適切に絶縁されているか、または必要な空間もしくは沿面距離が確保されているか。

●十分なアース接地が可能な端子を有しているか。

●制御盤などの内部配線において、NFPA79に指定された電線色を使用しているか。

●パワー回路とコントロール回路の分離が確実におこなわれているか。

●回転部の露出がないかなど、作業者の安全が担保されているか。

これらの予備検査で確認できなかった項目に関しては、最終検査で再確認がおこなわれます。最終検査は実際に製品が設置される場所にて検査がおこなわれます。最終検査の代表的な確認項目は以下のとおりです。

●アースが適切に接地されているか。

●電源が適切に配線されているか。

●非常停止の動作確認。

●予備検査で報告された相違点の是正処置が実施されているか。

●メンテナンススペースの確保がされているかなど、作業者の安全が担保されているか。

これらの検査は製品が動作する状態で実施されることもあります。

なお、依頼する機関や製品によって項目が異なるため、事前に確認しておきましょう。

6. フィールドエバリュエーションの課題

認証機関は、依頼者との利害関係を排除するためにもコンサルティング業務ができないように決められています。技術ミーティングを依頼した場合にはある程度の回答を得られることもありますが、コンサルティング業務とみなされるような具体的な提案などはおこなわれませんし、そもそも検査エンジニアがその装置に詳しくないケースもあります。

フィールドエバリュエーションで不合格になった際は、評価レポートが送付されるのみです。このため、不合格となったけどどのように仕様変更すれば合格するかわからないケースが多々あります。

7. フィールドエバリュエーションを依頼する前に

認証検査で不合格にならないためにも、フィールドエバリュエーションに検査を依頼する前に、コンサルタントに製品の仕様や技術資料の確認を依頼することをおすすめします。

7.1. コンサルタントに相談する

コンサルタントを選ぶ基準としては、製品の技術に詳しいことが挙げられます。技術的な知見が豊富な場合は製品全体に対して包括的な提案をしてくれますので、コンサルタントを選ぶ際の参考にしてください。

7.2. 資料を用意する

認証検査の最終段階として、検査に必要な資料の準備をおこないます。提出が必要な情報は、製品のカタログ、図面、装置の電気定格情報、装置の最終設置場所の情報などです。

この他にも、技術資料として正式な最終図面一式、電気回路図面と一致する形で識別記号を伴った部品配置図、すべての動力回路、電源電圧、コントロール図面、セーフティーインターロック、非常停止の回路図面、部品リスト、装置のマニュアルが必要になります。

ただし、UL Japan検査の確認事項同様、依頼する機関や製品によって必要となる資料が異なるため、こちらも事前に確認しておきましょう。

8. まとめ

フィールドエバリュエーションは少数の製品を輸出する際に便利な認証です。また、フィールドエバリュエーションに関わらず、認証取得には専門の知識のみならず、認証試験に合格した経験が大切です。

三笠精機では、制御盤の設計から製造、認証取得まで、すべての工程に自社で対応しています。特に認証に関しては、フィールドエバリュエーションに限らず北米、日本、ヨーロッパなど世界各国の認証試験に合格してきた実績があります。

認証取得を見据えた制御盤製造をお考えの際は、ぜひ三笠精機にご相談ください。