過電流保護機器の種類

2025年12月17日

ブレーカーなどの過電流保護機器には様々な種類があります。 制御盤を設計する際は、それぞれの違いを理解して選定する必要があります。  

過電流保護には、短絡保護と過負荷保護の2つの役割に分けることができます。 家庭用の分電盤などでは、接続する機器は小さく、大きな突入電流などが少ないため、 ブレーカーが過負荷保護を兼用します。  

産業用装置では、大型のモーター類の突入電流でブレーカーがトリップすることもあるため、 ブレーカー類は主に短絡保護のために使用し、過負荷保護はサーマルリレーなどを使用することが 一般的です。 

ここでは主に短絡保護を目的とした保護機器を紹介します。  

現在最も一般的な短絡保護機器で、ヒューズとは異なり繰り返し使用できることが特徴です。  

ノーヒューズブレーカーという名称が一般化した関係で、電気回路においてNFBという名称を使用することが多いです。  

バイメタルで過負荷を検知し、電磁ソレノイドで短絡電流を検知し、どちらかが反応すれば、ONした時に変形したばねの力を使ってトリップさせます。  

ZCTを追加して漏れ電流検知も行う漏電ブレーカーや、突入電流のあるモーターに最適化したものなど、様々な種類のものがあります。  

ヒューズ 

最初期に発明された短絡保護機器です。  

構造は単純で、亜鉛、銅、銀などの電路を細くして、一定以上の電流が流れると発熱し、急激に抵抗が上がることで短時間で溶断する、というものです。 ブレーカーと異なり、電路そのものが細いため限流特性に優れ、短絡保護としては最も高い性能を発揮します。 

欠点は、定格電流に近い電流を流し続けると短絡や過負荷がなくても溶断する可能性があることで、予備品の確保は必須です。  

マニュアルモータースターター 

元々はナイフスイッチのような手動のスイッチが原点で、電気安全の要件が厳しくなるにつれ、様々な機能が盛り込まれたものです。  

この時点での対義語は電磁接触器などの遠隔操作スイッチです。  

現在のマニュアルモータースターターと呼ばれる機器は、モーターの電源回路を直接ON/OFFするスイッチの機能と、サーマルリレーの過負荷保護機能、そしてブレーカーの短絡保護機能が全て一体化した機器です。  

また、マニュアルモータースターターに電磁接触器を組み合わせるというコンビネーション製品もあります。  

マニュアルモータースターターの短絡保護機能は、ブレーカーと比べると寿命が短く、短絡が起きた際は交換を要する場合があります。  

サーキットプロテクタ 

サーキットプロテクタはブレーカーと同様の構造ですが、制御回路の保護を目的とした小型の保護機器で、IEC 60934 に適合させたものです。  

制御回路をその機能や接点定格をもとにいくつかに分類し、それぞれをサーキットプロテクタで保護することで、短絡や過負荷の際に機器の破損を防ぐことができます。    

サーキットプロテクタは回路に設置された機器ごとに設置することで、どの機器に異常が発生しているかがすぐにわかります。これにより、安全性が向上するだけでなく、回路の修理も容易におこなえます。   

サーキットプロテクタの役割は過電流から回路を保護することですが、他の短絡保護機器に比べて動作が速く、精密な制御回路の保護に適しています。  

遮断の速さは瞬時・中速・低速・および突入電流対策品など回路の特性に合わせて選択できます。 

例えば、リレー回路や抵抗回路、および制御機器の電源回路は短絡時以外には大電流は流れず、電流量が比較的大きいという特徴があります。このような回路では中速形のサーキットプロテクタが使用できますが、PLCなどの半導体接点の電子回路は過負荷耐量が小さく、わずかな過電流が流れても回路が破損してしまう危険性があるため、このような回路には応答性のよい瞬時形が必要です。  

定格電流の決定方法は、保護したい回路のうち最小の接点定格に合わせることが理想です。  

また、SSRなどの短絡に弱い機器がある場合は、サージオン電流耐量と遮断特性のグラフを確認し、保護できているか確認することが必要です。  

なお、サーキットプロテクタは遮断容量が小さく、大きな短絡電流が流れると遮断できずに溶着してしまうため、原則電源回路では使用できません。  

ただ、日本で一般的な三菱電機や富士電機のCP30シリーズなどは、IEC 60947-2 にも適合しているため、要求される遮断容量が小さい場合に限り、電源回路でも使用できます(UL489には適合していないので北米ではNG)。