制御盤の規格にはどのような種類がある?格納されている部品や役割についても解説

2022年3月16日

制御盤の規格は1種類ではなく、数多くの種類があります。これは規格が国や地域ごとに異なっており、機械の装置や設備によって規定されているものも異なります。

数が多く複雑な規格ですが、今回は制御盤に関するさまざまな規格の特徴などを解説するとともに、制御盤の内部で使用されている各種部品についても解説します。

1. 制御盤(コントロールギア)の役割と規格適合

制御盤は電力の制御やシーケンス制御をおこなうための盤です。制御盤の上流からは電力が供給されており、この電力を下流に振り分けるとともに電力の一部でプログラムを動作させ、機械をプログラムどおりに動かします。この制御盤を対象にした規格は世界中にたくさんあり、制御盤を市販する際には適切な規格に沿って作られます。

1.1. 個別規格への適合

個別規格とは工作機械やエレベーターなど特定の装置や機械に関する規格です。この個別規格が定められている製品は、規格に適合するために該当する個別規格に従って設計および製造する必要があります。

JIS Z 8051 (ISO/IEC ガイド51)での規格適合の原則は、

・製品に特化した個別規格がある場合はそちらを優先する
個別規格がない場合や、あっても細かな要求がない事項についてはグループ安全規格を適用する

というものです。

一般的に、市場規模が大きく流通量が多い製品カテゴリや危険性の高い製品カテゴリの場合は、個別規格が存在することが多いです(工作機械やプレス機械など)。

1.2. 電気規格への適合

電気規格は電気に関する規格を定めており、国際電気標準会議(IEC)規格など電気専門規格として単独で存在する場合が多く、専門性の高い分野です。制御盤は電気を制御しますので、設計および製造の際にはこの電気規格を参照する必要があります。

装置は『個別規格への適合』に記載した機械構造的な要求の他に、電気的な要求にも適合させる必要があります。一般的な機械の場合は、基本的にJIS B 9960-1 (IEC 60204-1)への適合が必要です。欧米でもNFPA79やEN60204-1など、ほぼ同様の要求があります。

なお日本には、古くから「内線規程」に代表されるJEACなどの民間自主規格が存在しますが、IEC規格への整合化が完了していないものも多く、注意が必要です。民間規格ですので、追加で要求される場合に適合させること自体は問題ありませんが、適切なJISやIECの規格に不適合となる要素があれば、JIS規格を優先すべきと考えられます。機械類の制御盤でよくある事例としては、スイッチの色や電線色はIEC60204-1 (JIS B 9960-1)で推奨色が限定されていますので、AC/DCの全ての制御線が黄色であったり、起動ボタンが赤色といったものは、個別規格で規定がない限りはNGとなると考えられます。

2. 制御盤の規格の種類

制御盤にはさまざまな規格がありますが、これは国や地域ごとに異なる規格が運用されているためです。ただし、国際電気標準会議などにより世界的な規格の標準化がなされているため、それぞれの規格の中身には大きな差はなくなりつつあります。

2.1. UL規格

UL規格はアメリカ・イリノイ州に本拠地を置く営利企業UL LLCにより定められている規格です。ULは試験や検査、認証をおこなう認証企業で、世界中に支社を持っています。UL規格は幅広い範囲がバーされており、制御盤に関する規格も存在します。制御盤に関する規格はUL508Aで、1,000V以下で使用する産業用の制御盤に対して使用されます。

UL規格の詳細に関しては以下の記事を参照ください。

>> UL規格とは?取得する必要性や認証方法について解説

2.2. CE

CEはEU加盟国およびEFTA加盟国で使用されている規格です。CEの特徴は、製品が規格に沿っているかどうか自社で検査可能であること。検査の結果、規格に沿っていると判断した場合、自己宣言をおこなうことでCEマーキングがおこなわれます。ただし、万が一規格に沿っていないことが明るみに出た場合には罰則を科せられますので、真摯な検査が求められます。

CEの詳細に関しては以下の記事を参照ください。

>> CEマークとは?取得が必要な製品や取得方法について解説

2.3. 国際電気標準会議規格(IEC 61439)

国際電気標準会議(IEC)は世界各国の電気および電子技術の分野の規格を標準化する機関で、さまざまな国の機関が参加しています。国際電気標準会議規格はIECにより作られた電気および電子技術に関する規格です。

IECが定めている制御盤に関する規格として、IEC61439があります。低電圧開閉装置および制御装置アセンブリーに適用されるほか、制御盤にも適用されます。

2.4. 日本電機工業会規格(JEM 1425)

日本電機工業会規格は日本電機工業会(JEM)が定める規格です。日本電機工業会は、IECやISO、JISといった他の団体規格の審議や制定にも参画しており、規格の標準化をおこなっています。

このJEMの規格のうちJEM1425は、定格電圧1kV以上36kV以下の金属閉鎖形スイッチギヤおよびコントロールギヤが対象となっており、1kVを超える定格電圧を制御する制御盤も対象に含まれています。

2.5. EMC規格

規格はさまざまな団体により定められており、その団体の名前が付けられていますが、中にはEMC規格のように性質を名称としている場合もあります。

EMCとはElectro Magnetic Compatibilityの略で、電磁両立性と訳されます。一般的に電気を使用する機器はその仕組みにより大なり小なりノイズを発します。例えば、回路に交流を流すとその周波数の電磁波が発生し、モーターを回転させた場合や電子レンジのマグネトロンなどもノイズとなる電磁波を発生させます。

このノイズとはさまざまな周波数の電磁波のことで、機器類によっては干渉を受けやすい周波数があり、このような周波数をキャッチすると誤動作を起こしてしまいます。逆に、自身もノイズをキャッチして動作に不具合を起こす可能性もあります。

電磁両立性とは、他の機器類の障害となるようなノイズを出さないこと、または他の機器類からのノイズにより影響を受けない耐性を持っていることをいいます。EMC規格とはこの電磁両立性に関する規格であり、ISOやIEC、JISなどさまざまな規格中にEMSの項目が定められています。

2.6. UKCA

UKCAはイギリスのEU離脱にともない制定されたイギリスの規格です。しかし、制定が難航していたため、UKCAマークの表示義務は無期限延長となっています。そのためイギリスでは現在もEU規格のCEマークが用いられています。

2.7. NFPA70・NFPA79

NFPAはアメリカの全米防火協会が定める規格であり、アメリカおよびカナダでは一般的な規格です。その中のNFPA70は電気工事の規格を定めています。またNFPA79は産業機械の規格を定めており、公称電圧1,000V以下の電圧で動作する産業機械の電気システム全体に適用されます。

NFPA79に関しては以下の記事を参照ください。

>> NFPA79とは?認証取得に必要な審査項目や他のUL規格との違いについて解説

2.8. 保護等級規格

保護等級とは、防水や防塵の保護のレベルを指しています。この等級は国際電気標準会議により標準化がおこなわれており、IPコードとして定められています。防塵は0級から6級まで、防水は0級から8級までレベルが分けられており、防塵も防水も、ともに最も高い級では塵も水も内部に入らず、完全にシャットアウトした状態を指しています。また、このときのIPコードはIP68となります。

3. 制御盤に格納されている部品

制御盤内にはさまざまな部品が使用されています。その代表的な部品をご紹介します。また、これらの部品にもさまざまな規格があり、なるべく規格を満たした部品を使用したほうが規格の認証を得やすくなります。

3.1. リレー

リレーは開閉器とも呼ばれます。自動で開閉するスイッチのことを指し、高電圧の回路の安定的な開閉を実現します。よくヒーター線に取り付けられ、リレーを開閉することでヒーターに電気を流したり止めたりします。リレー自体は低電圧で動作させることができますので、小さな電圧でもヒーターなど大きな電圧がかかる回路の開閉が可能です。このリレーとともに熱電対などの温度計を取り付けることで、ヒーターによる温度制御が可能となります。

3.2. タイマー

タイマーは、設定された時間が過ぎるとスイッチをオン・オフする機能を持っています。リレーに取り付けると規定時間が経過するごとに回路の開閉をおこなえますので、ヒーターのみならずモーターやアクチュエーター、エアなどの時間制御が可能となります。

3.3. スイッチ

スイッチは回路を物理的に開閉します。スイッチはオフすることで回路を確実に遮断できるので、装置のメインスイッチのみならず非常停止ボタンにも使用されています。押しボタン式やトグルスイッチなど手動で開閉をおこなうタイプのほか、コイルに電流を流すことで磁場を発生させ開閉をおこなうマグネットスイッチやマグネットコンタクターなどもあります。

3.4. PLC

PLCはパソコンのような制御機器です。装置制御のためのプログラムを読み込ませて実行させる、いわゆるシーケンス制御が可能となります。PLCはパソコンよりも再現性に優れており、同じ動作を繰り返してもパソコンのようにフリーズしてしまうリスクが少なく、誤動作を起こしにくいのがメリットです。このような高い信頼性から、シーケンス制御にはPLCが用いられています。

3.5. 電磁接触器

電磁接触器はマグネットコンタクターとも呼ばれます。電源スイッチをオンにすると回路に電気が流れますが、このとき、電磁接触器に電流が流れ電磁石が引き合うことで金属が接触し、スイッチがオンになります。この電磁接触器の利点は、電流がストップすると電磁石の磁力がなくなり、スイッチが自動でオフになることです。これにより、回路下流の負荷を保護します。

3.6. 温度センサー

温度センサーには温度計があります。広く使用されている温度計は熱電対です。熱電対は、異なる金属線を両端で接触させたときに温度差により起電力を生じるゼーベック効果という現象を利用しています。この電位差を測定することで正確な温度を知ることができます。

他にも、異なる金属の膨張率の違いを利用して回路の開閉をおこなうバイメタルという素子もあります。このバイメタルは2種類の金属を合わせたもので、温度異常が起こると2つの金属が変形し、一定温度以上になると2つの金属が離れて電気が流れなくなることで装置や回路を保護します。

4. 装置マニュアルの作成

装置にはマニュアルが付属しています。マニュアルは近年重要視されており、特に製造物責任法(PL法)の登場により、事故が発生した際にマニュアルに該当の記載がない場合には製造者が責任を負わなければならなくなりました。つまり、マニュアルは使用者のみならず製造者を守るための製品の一部ともなっています。

さらに、装置のマニュアルは技術資料として認証検査の前に提出する必要がありますので、PL法や認証取得を見据えたマニュアルの作成が求められています。

5. まとめ

制御盤には国や地域によりさまざまな規格があります。そのため、規格の認証を取得するためには使用先の規格をしっかりと調査する必要があります。認証試験で不合格となると合格までにさらに日数とコストがかかってしまいますので、一回で合格できるような準備が必要です。

三笠精機ではこれまで、数多くの制御盤や産業機械の認証取得をおこなってきました。認証取得した規格は日本のみでなく、アメリカやヨーロッパなどの規格にも対応しています。

制御盤の設計から製造、認証取得まで、制御盤に関することなら、どのようなことでもぜひ三笠精機にご相談ください。