SCCRの基礎知識「なぜ米国は厳しいの?」
SCCR(Short-Circuit Current Rating:短絡電流定格)とは、機器または制御盤が、どれだけの短絡電流(対称実効値:kA)に耐えられるかを示す定格(その機器が設計上安全に扱える最大値・性能値)です。
ここでの「耐えられる」は機器そのものが壊れても良いが他に影響を与える障害を及ぼさないかという意味であり、その後の製品としての機能の保証をするものではありません。
制御盤内部の部品は、それぞれ短絡耐量に基づく SCCR が設定されており、制御盤全体の SCCR は特定の内部部品のうち最も低い部品の SCCR で決まります。
UL508A Supplement SB において、制御盤メーカーは以下を行う義務があります。
- 盤の定格SCCRを決める計算方法は個別部品のSCCRを確認し、組み合わせ評価ルールで算出する
- 制御盤外形図またはラベルにSCCRをマーキング(PLATE)する
なお三笠精機では、標準的にSCCR以外にもUL508Aの表示要求に従った定格銘板のテンプレートを用意しています。設計時に内容を確認して記載し、制御盤に貼付して納品しています。
米国で要求が厳しい4つの理由
米国内ではSCCR が厳しく要求されています。主な理由は4つあります。
理由その1 NFPA70(NEC)の法的要求
設置場所のAFC以上のSCCRを持たない場合、設置不適合となり通電許可(AHJの承認)がおりない。
理由その2 米国の電力事情
米国の変電設備は大容量で、短絡電流が20kA〜65kAなど非常に大きい例が多い。
理由その3 保険会社の要求
保険会社が、高いSCCRを持つ制御盤を推奨または要求するケースが多い。
理由その4 ULは「安全の第三者認証」であるため
UL508Aでは、設計者が恣意的に SCCR を高く設定することが禁止されている。
対応の手順とは?
ここで、UL508A Supplement SBに基づくポイントをいくつか紹介します。
ポイント① SCCRの対象となる部品
制御盤のSCCR決定のため、必要な箇所すべての部品の SCCR を確認します。
なお、例外規定として除外されるものもあります。
ポイント② 各部品カテゴリ、定格におけるSCCR標準値
認証情報にSCCRが記載されていない部品には、規格内のテーブルで、標準デフォルト値が決められておりそちらを参照する必要があります。
ポイント③ 組み合わせ評価を含めた部品のSCCRの確認
UL508A Supplement SBでは、定められた優先順位で SCCR を決定します。
- 利用可能な組み合わせ定格(組み合わせ評価)がある場合は、その値を使用する。
- 組み合わせ評価が無い場合は、定められた順に決定されたSCCRに基づく。
ポイント④ ULは「安全の第三者認証」であるため
UL508A では、制御盤内部の各支線も一定のルールによりSCCRが決まります。
高SCCRに対応する方法
SCCR向上の典型的な手段について、UL508A に沿って解説します。
(1)トランス設置や限流ヒューズによる限流
限流ヒューズ
限流ヒューズは短絡電流のピークを大幅に低減する効果があり、下流機器の SCCR を大幅に引き上げられます。
トランス(制御電源トランス)
短絡時にインピーダンスが入り限流効果が生じるためです。
(2)組み合わせ評価品(UL Listed combination rating)を選定する
(3)大きなフレームのブレーカーを採用
(4)低SCCR部品を排除する
SCCR対応においてコストが上がるポイント
対応時には、コストを抑えることが重要になります。以下に、一般的にコストが上がるポイントを記載します。
- 大きなフレームのブレーカーの採用
- 限流ヒューズと専用ヒューズホルダ
- 組み合わせ評価品
- 端子台・補助リレーの UL Listed 高SCCR品の選定
- 設計変更コスト(盤サイズ拡大、部品配置の変更)
まとめ
SCCRは制御盤が耐えられる短絡電流の能力を示し、米国では NEC により法的に要求されています。つまり、その対応はマストであるということです。
また、制御盤のSCCRは、内部部品の最も低いSCCRにより決まります。
高SCCRを実現する方法はありますが、コスト上昇を引き起こすため、 設計初期段階からAFC情報を入手し、戦略的に部品選定を行うことが重要となります。
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