NFPA79についてUL規格との違いから解説!対応ケーブル・電線や配線、適用対象について

2022年3月12日

世界には、NFPA79やUL規格など、さまざまな規格が存在しています。これらの規格は基本的に互いに独立していますが、規格によっては他の規格を参照するよう指示が入る場合もあります。NFPA79とUL規格のように、同じアメリカの規格で関連性が強く、補完関係にある分野もあります。

今回は、NFPA79とUL規格の違いや補完関係、適応対象などについて解説します。

1. NFPA79とは?

NFPA79は、NFPA(全米防火協会)が定める産業機械用電気の安全規格です。電気機械を製造する際に守るべき規格を定めていますが、この規格自体には法的な拘束力はありません。しかし、州によっては法律でNFPA79を遵守することが定められており、その場合は法的拘束力が発生します。そのため、アメリカおよびカナダに産業用機械を輸出する際にはNFPA79は重要な規格となります。

NFPA79は公称電圧が1,000V以下で動作する機械の電気システム全体に適用されます。つまり、電気で動作する機械のほとんどに適用される規格であるといっても過言ではありません。ただし、公称電圧1,000V以下の機械であってもNFPA79ですべてカバーされているわけではありません。

例えば、制御盤で動作する産業機械はNFPA79によりカバーされていますが、制御盤に関してはUL規格のUL508Aが適用されるため、制御盤を含む産業機械の認証に関してはNFPA79とUL508Aの両方の規格に適応する必要があります。

>> NFPA79とは?認証取得に必要な審査項目や他のUL規格との違いについて解説

1.1 認証取得に必要な審査項目

NFPA79の審査には、電気設備が技術文書と相違ないか、絶縁抵抗テスト、電圧テスト、残留電圧テストに対する保護、機能性テスト、リスクアセスメント確認の6つの項目があります。審査ではこれらの項目ごとに製品がNFPA79の規格に沿っているかどうかが確認され、問題がなければ合格となります。

1.2 NFPA79とUL規格の違い

NFPAは非営利組織ですが、ULは試験や認証業務をおこなう営利企業であり、UL規格はUL社により作られた規格です。どちらも規格ですが、UL規格には産業用機械全体に適用される規格がないため、産業用機械に関してはNFPA規格が適用されます。

一方、サーキットブレーカーなどのパーツに関してはUL規格で細かく規定されており、このようなパーツ類にはUL規格が適用される場合があります。UL規格を取得したパーツはULのリストに登録され、UL登録品やUL認定品、リスティッドなどと呼ばれています。

一度認証を取得すると、その規格を満たしていると証明されるため、このようなUL登録品や他の認証を取得したパーツを製品に使用すると認証試験にとおりやすくなります。このため、産業機械のパーツには基本的にUL登録品や他の認証取得品が使用されています。

一方、NFPAでもケーブルやさまざまなパーツに適用される規格があるため、どのパーツを使用するかは取得したい認証の要求内容を確認したうえで選定する必要があります。

2. NFPA79の適用対象・対象外となる機械

続いて、NFPA79が適用される産業機械と適用外となる機械の違いについて解説いたします。

2.1. NFPA79の適用対象となる機械

NFPA79は公称1,000V以下で動作する産業用機械に適用されますので、産業用に使用される機械の多くに適用されます。切削機械、溶接機、電気炉、各種加工機械、ベルトコンベア、産業用ロボットなど、さまざまな産業機械が当てはまります。また、アメリカの工業用の電圧は高くても三相で470Vですので、工場の電源で使用できる機械は基本的にNFPA79の対象になると考えられます。

2.2. NFPA79の適用対象外となる機械

NFPA79が適用されない機械は、公称電圧が1,000Vより高い電圧で動作するものです。ただし、プラズマ発生装置や電子銃を用いる電子顕微鏡、エックス線を発生させる装置などは1,000Vより高い電圧を使用する機器ですが、対象外です。これら昇圧器が用いられている機器を輸出する場合は、機器内部で発生する最大電圧が1,000V以下であることを確認しておく必要があります。

他にも、危険区域に設置される機械やULの要求に基づき判断された工具、および住宅で使用される機械に関してはNFPA79の対象外になります。

3. ケーブル・電線の選定は重要

電線は熱に弱く、漏電事故を引き起こしやすいため、安全に関わる重要なパーツです。このため、NFPAはケーブルおよび電線の規格を細かく定めています。仕様に適合していないケーブルを使用していると認証試験で不適合と判断される可能性もあります。

不適合と判断されると、仕様に合ったケーブルへの取り換え作業をおこなわなければならず、その分納期が遅れるとともに追加のコストが発生します。さらに、再度認証試験をおこなわなければならないため、大きな損失となってしまいます。

このような損失を防ぐためにも、ケーブルおよび電線は適切な製品を使用する必要があります。

4. NFPA79の配線のポイント

ケーブルは銅やアルミニウム合金を絶縁体と被覆で覆ったもので、電線は金属線を絶縁体で覆ったものです。一般的なケーブルは複数の電線をまとめて作られており、コネクタを介して機械同士を繋ぎ通信や電気の供給をおこないます。ケーブルは制御盤や機械の外部でも使用するため、高い耐久性や耐熱性が求められます。

ケーブルや電線には、使用の際の最大温度および最大電圧である定格温度と定格電圧、さらに流せる電流値である許容電流が定められています。その他にも、耐熱や耐圧、データ通信など、特性や用途ごとにさまざまな種類のケーブルや電線があります。耐圧や耐熱のレベルなどにより細かく分類されているうえ、被覆の色が異なる場合もあり、ケーブルの種類も非常に多くなっています。

NFPA79には色の指定もあり、特定の回路には特定の色を使用する必要があります。例えば、緑色と黄色の線はアース線、白色は中性線など、青は直流制御回路などに使用することが定められています。このような回路にNFPAが指定する色の電線を使用していないと、認証検査で指摘され不合格となります。

このため、制御盤のみならず産業機械を製作する際には、回路にかかる電圧や電流値、さらに使用場所の温度、色などを考慮してケーブルおよび電線を選択する必要があります。

5. まとめ

NFPA規格とUL規格には、制御盤と産業機械のように補完し合っている領域もあります。そのため、認証取得のためには一つの規格だけはなく複数の規格を確認しなければならない場合があり、注意が必要です。

また、ケーブルなどパーツ類にも認証ごとに細かい規格が存在していますので、認証取得を前提とした装置の設計、製造時にも注意が必要です。このようないくつかの認証が補完し合う関係があることが、認証検査を複雑にしている要因です。

三笠精機では、NFPAやULに限らず、日本やカナダ、ヨーロッパといった主要な認証の取得経験を豊富に有しています。そのため、制御盤だけでなく、制御盤で動作する装置全般でNFPA79に沿った提案やコンサルティングが可能です。特に、制御盤に関しては認証検査を念頭に使用するパーツ一つひとつを吟味し使用しており、認証取得に強い制御盤が完成します。また、各種技術資料に関しても認証検査を見据えて作成しています。

制御盤の設計から製造、認証取得まで、少しでも疑問や不安をお持ちの際は、三笠精機へお気軽にご相談ください。