NFPA79とは?認証取得に必要な審査項目や他のUL規格との違いについて解説

2023年7月11日

アメリカの産業機械の電気規格であるNFPA79。この規格はアメリカおよびカナダで大きな影響力を持っており、北米に産業用機械を輸出するメーカーにとっては重要な存在となっています。

今回は、アメリカの産業機械用電気規格であるNFPA79を解説します。

NFPA79とは

NFPA79とは、全米防火協会(NFPA)が定める産業機械用電気規格のことです。自動車業界や半導体産業、食品産業など、産業機械を使用する幅広い業界で採用されており、アメリカの産業界においては電気に関する重要な規格と位置付けられています。

NFPA79は電気システムの安全性を向上させるために作られており、産業機械のオペレーターや機器・設備を感電や火災といった電気事故から保護するために必要な、電気に関する規格を定めています。NFPA 79の「79」とは全米防火協会が作っているさまざまな規格の一つであることを示しており、他にも用途により数多くの規格が存在しています。

電気の規格といってもその範囲は広く、電気機器の保護、使用する電圧やケーブルの種類、配線の接続方法、接地方法、制御方法などのカテゴリがあり、そのカテゴリ内のさまざまな要件に対して詳細な規格が定められています。この規格を守ることにより電気事故のリスクを最小限に抑えるとともに、産業機械の安全性および信頼性を向上させ、事故の低減による生産性の向上を目的としています。

元々、NFPAは民間の非営利団体であり、その定める規格に法的な強制力はありませんでした。しかし現状、NFPA70や79は、安全基準として州法等で引用されています。つまり、事故が起き、事故の箇所が規格と異なっていた場合には損害賠償を請求される恐れがあるということです。

そのため、アメリカ向けに産業機械を製造、輸出する際には、NFPA79を遵守することが大切なのです。

NFPA79は3年ごとに改定されており、その都度内容が変更される場合があるため、過去に合格していても新たに認証を取得する際には最新の内容を確認する必要があります。

NFPA79と他のUL規格との違い

アメリカにおける認証機関では、UL(Underwriters Laboratories)が広く知られています。NFPA(National Fire Protection Association)は前述のとおり非営利団体であり、営利企業であるULとは違いがありますが、どちらも独自の規格を定め、工業製品が規格に沿って作られているかどうかの試験や検査、認証をおこなっています。

アメリカで広く用いられている電気の安全性に関する規格がNFPA79とUL508Aですので、アメリカに産業機械を輸出する場合はNFPAおよびULに沿った規格で設計・製造し、認証を得るのが一般的です。UL508Aは産業機械の電気システムのうち制御盤に関しての規格を定めているため、一般的には装置全体ではNFPA79、制御盤ではUL508Aを取得します。これらの規格は、アメリカ規格協会(American National Standards Institute)の頭文字であるANSIとともに、ANSI/NFPA79、ANSI/UL508Aと表記される場合もあります。

ULの場合、UL社が定めた方法に従って完成品の試験および検査をおこない、合格すれば出荷する製品にUL認証マークを貼ることが許可されます。UL社は世界的な企業であり、日本にも支社があるため、試験および検査は日本国内でもおこなえるという利点があります。

NFPA79の規定範囲

NFPA79は産業機械の電気安全規格を定めており、公称電圧1,000V以下の電圧で動作する産業機械の電気システム全体に適用されます。公称電圧が1,000V以下であれば、半導体製造装置や産業用ロボット、加工機械など、産業用に使用される機械の多くが含まれることになるため、電気を使って動く産業機械の大部分に適用されることになります。

NFPA79の規程の範囲は、電源、使用環境、輸送および保管、インストールおよび操作条件、機械の取り外し方法、保護方法、過電流保護方法、モーターの過負荷防止、異常加熱防止、接地、制御回路、インターロック、インターフェイス、制御装置、制御装置の設置および場所、ケーブル等の使用条件、モーター、安全標識、技術文書、自動制御と、多岐にわたっています。これらの項目の設計が適切になされているか、適切にインストールされているかを詳細に確認・審査され、規格を満たしていなければ審査に不合格となります。大規模な装置になればなるほど、設計段階で入念な検討が必要になります。

NFPA79の認証取得に必要な審査項目

NFPA79の審査は、産業機械がNFPA79の規格に沿った設計がなされているか、適切にインストールされているかといった評価をとおしておこなわれます。NFPA79の実際の審査項目は以下6項目です。

  • 電気設備が技術文書に書かれているとおりであるかの確認
  • 絶縁抵抗テスト
  • 電圧テスト
  • 残留電圧テストに対する保護
  • 機能性テスト
  • リスクアセスメントの確認

最初の審査は最初の審査は、電気設備が設計どおりであるか、規格要件に適合しているかを技術文書を参照しながら確認し、パスすれば次の審査となる絶縁抵抗テストがおこなわれます。  

まとめ

NFPA79は機械類にほぼ確実に適用すべき基本規格です。  

原則工場出荷時での認証ができないため、現地での改造リスクを減らすには日本国内で事前審査をした上で現地にてField Evaluation を実施する必要があります。  

NFPA79で評価したField Evaluation ラベルがある装置は、AHJの審査で指摘を受けるリスクを大幅に低減可能です。